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ストレンジのーまるデイズ
第二十二話 前へ | 既に陽は落ちようとしていた。 休日とは言え、夕暮れの駅前は人の流れで占められていた。その多くは駅から出る、家へと帰る流れ。疲れと、しかし活気に満ちた空気がある。 そんな雑踏の中、しかしその人は止まっていた。 薄い青のワンピースに包まれた、完璧なプロポーション。雑誌に載ってるモデルのスリーサイズはけっこうごまかされてるとか言うけれど、もし数値のそのままで完全に作り上げたらこうなるだろう完璧さ。 そんな綺麗な女の子なのに、その肩は落ち瞳は悲しみに揺らいでいる。 名土先輩が、そこにいる。 俺は走り続けて荒くなった息をどうにか整え話しかける。 「先輩……」 「竜ヶ崎……くん、遅いです」 「え?」 「ずっと、待ってしまいました」 ……先輩は一体何を言っているんだろう。ついさっき、酷い別れ方をしたっていうのに、何を言ってるんだ? てっきり先輩は俺に二度と会いたくないんじゃないかと思っていた。メイド学科の寮に帰った可能性だって考えていた。それが、”待っていた”だって……? 「ああ、でもいけませんね。こういうとき……男の子が遅れてきたとき、女の子は、”今来たところ”と言わなくてはいけませんよね……?」 「先輩……?」 ゆるやかに微笑みながら言う先輩に、俺は呆然と呟くだけだった。 ますますわからなくなる。先輩の言ったセリフは確かにデートの定番と呼べるものだ。昔のドラマや漫画で幾度となく使われて、でも使われすぎて最近のものではかえって見かけない定石。 あきらかなおかしさに、今日感じていた違和感が大きくなる。 まわりは相変わらず忙しく人が通り過ぎている。 そんななか二人で見つめ合うこともなく、ただ向かい合う。 奇妙に張りつめた空気。喧噪の中、そこだけ切り取ったようにある静止。しかし、それはすぐにうち破られた。 「待っているんです!」 突然、先輩は俯いていた顔を上げ、大声を張り上げる。だがその声は俺に向けたと言うよりただ外に向けただけの叫びだった。 その様は、ただただ必死さが感じられた。 「私をデートに連れて行ってくれる、竜ヶ崎くんを待っているんです!」 まるですがるような必死さ。あんなことがあったというのに先輩はかたくなにデートをしようとしている。デートに臨む理想の女の子を演じようとしている。 そして俺はようやく気がついた。今日一日付きまとっていた違和感。 それが何であるのか。ようやく確信した。 「先輩……」 「私は、私は……!」 「先輩!」 叫びとともに強引に手をとる。とるだけではなく、そのまま引きずるように歩く。全力疾走を終えたばかりの足は、思ったように力が入らない。でもその頼りなさをねじ伏せるように強引に、強く強く足を踏み出す。その勢いで歩き出す。 アーケードを抜け、映画館の前を過ぎ、ファミレスを通り過ぎる。 先輩の抗議の声を無視し、周りの目など気にせず、疲労の限界を訴える身体すら意に介さずただただ進む。 いらだっていた。先輩に感じていた違和感が気に障った。それに気づかず浮かれていた自分に腹が立った。 だから、そんなことを終わらせたいと思った。 そしてついたのは公園。最後に先輩と話そうとした場所。一日の終わりを迎えようとするそこは、夕陽によって燃えるように赤く紅く染め上げられていた。 そこでようやく手を離す。 「デートの時は、男の子は女の子にやさしくするものです。こんなのはいけませんよ?」 先輩は手をさすりながら、不安げに言う。それでも可愛く拗ねるよう仕草。もし俺が「ごめんごめん」と軽く謝りでもすれば、すぐに仲直りできそうな雰囲気がある。それはまさに「理想の女の子」だった。 あんな別れ方をして、そしてこんなに強引に引っ張ってきたというのに、だ。。 だからこそ俺は違和感を感じてしまう。それにこの名土先輩はこんなふうにうやむやにして問題をごまかしてしまう人じゃない。 いらだちが止まらない。 それはどうすればいい? 俺なら、こんなときどうする? 決まっている。俺は竜ヶ崎勇人だ。。聖曰く「言いたいことを言うやつ」で、名土先輩の評するところ「悩みながら進んでいける」、竜ヶ崎勇人だ。 だったら、言いたいことを言って、そして前に進もう。 俺は息を一つ大きく吸い、そして努めて静かにかつ穏やかに声を出す。 「今日のデートはこの公園で締めくくりにするつもりだった。だから先輩とここでちゃんと話したいと思ったんだ」 「……そうなんですか?」 「さっきはすまなかった。デートだけどデートじゃない、なんておかしいよな」 「そ、そんな。私こそ申し訳ありません。竜ヶ崎……くんのことをひっぱたいてしまって……」 不安げだった先輩の顔が、わずかに明るくなる。なんだか笑ってしまいそうだ。俺が言っていることはおかしいことだらけだというのに、先輩はその流れに乗ろうとしている。それが、デートの流れだからなのだろう。 「本当にすまなかった」 「いえ、いいんですよ……」 「俺は勘違いしていたんだ。これは確かにデートじゃない。デートごっこだったんだよな?」 「え?」 先輩は呟きと共に凍りつく。その静止した様子に痛々しいものを感じる。だが俺は止まらない。止まるわけにはいかない。 「寮のみんながそう言っていたからそのワンピースを着てきた。みんながそう言っていたから勝負下着を着けてきたし、たぶんデートの時に女の子はこう振る舞うべきだとか、こういう状況ではこう答えるべきだとか……そんな話も事前に教わったんだよな?」 こくり、とうなずく。その様子はスイッチを押したら動く機械を思わせた。あきれるほどに素直な態度。名土先輩の個性の一つ。美点と言ってしまえるほどの欠点。 「それで、だ。……それのどこに先輩の意思がある? どこに名土メイがいる?」 俺の言葉に。先輩は震えた。口を硬く閉じ、何かに耐えるように。。戸惑いに揺れる瞳で、それでも目は逸らさずに俺のことを見つめている。きっと本当は先輩にもわかっている。だからこそ目を逸らさない。 その意志に答えるために、俺はあえて強く告げる。 「女子寮のみんなとやらにたきつけられてその気になって、それでデートに相応しい女の子を演じていたんだろう、先輩は! それがデート”ごっこ”じゃなくて、なんだって言うんだよっ!?」 「!」 そうだった。今日の先輩は、まるでそうであるように作ったかのように完璧な「デートの相手」だった。 そこまで先輩は俺に惚れていたのか? そんなバカな。迷ってばかり、言いたい放題の俺がそんな魅力的ないい男で在るはずがない。 先輩はデートを楽しむような状況にあったか? それもありえない。先輩は人生の岐路とも言うべき悩みの中に合ったはずだ。脳天気にデートを楽しむ余裕なんて在るはずがない。 だから、今日の先輩は違和感を感じさせた。メイドじゃないというだけじゃない。感じていた違和感の正体は、作り上げられた虚像を見ていたからだったのだ。 そして先輩は手を振り上げる。 それは先輩にとっては反射的な動作だったのだろう。しかし俺にとっては予想済みの行動だった。降り出す前に手を掴み、押さえつける。 「……一日に二度もぶたれるのはごめんだ。効くんだぞ、ああいう風に女の子にぶたれるのは」 「……!」 不意の平手打ちが止められ、先輩は戸惑うように視線を泳がせる。俯き、静かに語り出す。 「……確かに私は演じていたかも知れません。ですが、それのどこがご不満だと言うのですか……? だって、仕方ないじゃないですか。私は今までメイドとして学んできて……いえ、メイドとして”だけ”生きていました。男の方とのつきあい方など知る機会なんてありませんでした。だからそれを知るものに聞き、その通りに行動してなにがいけないと言うんですか?」 「……それは確かに間違ってはいない」 例えば好きな人がいたとして、その人が自分のためにいろいろ調べて準備してくれたら嬉しいだろう。当日現れたのが演じられた仮の姿だとしても、それが自分を想ってくれての行為ならどこに否定するところが在るというのだろう。俺にしたって今日のことはいろいろ事前に調べて準備もした。人のことは言えない。でも……。 「でしたら……!」 「でも、違うんだ。だって言っただろう? 俺は悩んでいる先輩の力になりたくてデートに誘ったんだ」 その言葉に、先輩は息を呑む。 ゆっくりと、大きく息を吸い、そして意を決したように言葉を放つ。 「竜ヶ崎様はデートに誘ってくださいました。……それは、竜ヶ崎様が選んでくださったと言うことではないのですか? 私の選べなかった問いに答えてくれたということではないのですか……?」 先輩の悩み。選ばなくてはならない選択肢は二つ。 なにが何でも俺のメイドになるか。 あるいは、俺を名土家に、夫として迎え入れるか。 先輩は、後者を選んだというのだろうか。 それはすがるような瞳。今にも泣き出しそうな顔で言ってくる。 平手打ちをしようとしていた手を離すと、力無く垂れる。脱力した、強い風でも吹けば倒れてしまいそうに頼りない姿。 だが俺は、そんな名土先輩を、 「そんなバカなことがあるわけないだろう」 一言で切り捨てた。 先輩の瞳がすがる弱さを捨て睨みつける強さを得る。それは上下の差のある関係から対等の関係になったこと言うことだ。 そうだ、その方がいい。聖に言ったことがあった。 『だいたいな、俺はこういうヤツなんだぞ。言いたいことは言う。とことん言う。だからお前も変な遠慮してると胃に穴が空くぞ?』 そうだ。俺はこういうヤツだ。 かつての神無月のように前から引っ張ってくれるヤツはもう要らない。かと言って後ろからすがりついてくるやつもうっとおしい。 近くにいてくれるのなら、隣を一緒に歩いてくれる人がいい。 ああ、なんだかメイドになりたい先輩を拒否し続けてきた理由がわかったような気がした。先輩におかしいところがあると言うだけじゃなくて、俺は自分の下に人間がいるというのがなんだかいやだったんだ。 だから今の先輩の目の方がいい。すがりつかれるぐらいなら、ケンカして睨まれた方がいい。 ああ、俺はなんて自分勝手なんだろうか。 でもそれが俺だ。言いたい放題に言う。そして引きずり上げてでも引きずり下ろしてでも、相手を対等にしてしまおう。そうするのが、俺だ。 「そんなっ……!」 戸惑う先輩に、俺は俺らしく言葉を続ける。 「本当にそう思うんだったらどうして確認しなかった?」 「それはっ……!」 「なんでデートの誘いをそんな重要な決定だと思ったんだ?」 「それはっ……!」 俺の問いに先輩は応えることが出来ない。俺に目を向けることすらできず、俯いたまま呟くような弱さで答えるだけだった。見たいのはそんな先輩じゃない。だから俺は核心を突く。 「それとも先輩の悩みは……俺がすぐに決めてしまえるほど軽いものだったのか?」 「それはっ……」 まだ先輩はうなだれている。しかし今まで力無く垂れ下がっていた手には力がある。広げていたはずの指はつよく握り混まれている。 そして、先輩は跳ね上がるように顔を上げ、 「違いますっ!」 強く、言い放った。 確かに意志のこもった言葉。俺はきっと、今日これを聞きたかったんだ。そのためにデートしようなんて言い出したんだ。 「……先輩は選択することから逃げたんだ。迷って、どうしようもなく迷って。でも答が出なかったんだろう? だから俺に問いかけて、それで俺がたまたま答えた言葉にすがってしまったんだ」 そうなんだ。今日の先輩はそういうことだったんだ。迷って悩んでそれでも答が出なくて、それで俺が指し示した道にすがってしまった。それは自分で選択することを放棄すると言うことに他ならず、あとは人の言いなりだ。今日、「人から聞いた理想のデート相手」をただただ演じたのもそういうことだったんだ。 「でも……じゃあ私はどうすればいいんですか……私にはわからなくなってしまったんです……竜ヶ崎様にメイドとしてお仕えすることも、妻として共にあることも……心を込めて接すると言うことになにも違いはありません。私はどちらを選んでいいのか、わからないんです……」 再び先輩は脱力する。全身から力を失ってしまったかのように肩を落とし、うなだれ、うつむく。 そうだ、これが本来の、「今の先輩」だ。デートという言葉にすがって目を逸らしていた、迷いに囚われた先輩自身。俺はこの先輩に言ってやりたいことがあったんだ。 「どちらも選ばなくていい」 まず、その一言を告げる。先輩は顔を上げる。その表情は驚きにきょとんとした、なんだか年下に見える可愛い顔だった。 「どちらも選ばなくていい。例えばメイドになるのをあきらめるという手もある。全てを捨てて逃げ出すってのはどうだ?」 「そんな……」 「今日だって、楽しかっただろ?」 先輩は答えない。だが、瞳にわずかだが輝きが戻る。力のなかった表情に少しずつ意志がこもる。 そう、先輩は本当に映画を楽しんでいた。確かに演じていたかもしれないが、それでも全てが嘘だったわけじゃないとはずだ。 「メイドを捨てて、今日楽しかったこと……それを当たり前に受け取れる日常を選ぶことだってできる」 先輩の眉が寄る。不快の表情だ。でもなにも表情がないよりずっといい。 だから俺はそのままに言葉を続ける。 「それともやっぱりメイドになりたいか? だったら俺なんかよりもっといいご主人様を見つけるって手もある。家柄も由緒正しく人柄も最高、先輩の母さんだって文句が言えないぐらい立派なご主人様に仕えればいい。文句が出たって押し切れるだろう」 「……竜ヶ崎様?」 「ああそうだ。先輩が名土家を乗っ取るってのはどうだ? あの選択肢をつきつけたのは先輩のお母さんだっけか? それより上の立場になれば、こんな問題ひっくり返せるんじゃないか? 先輩は仮にもメイドチャンピオン、学校で最高のメイドだろ? その勢いで頂点まで上り詰めろよ」 「……なにを言っているんですか……?」 先輩は戸惑うように言う。しかし先ほどの迷いに囚われ力の抜けた顔ではなく、そこには意志が感じられた。 だから、話そうと思う。 「俺は昔、目標を見失った」 「竜ヶ崎様……?」 唐突な俺の切り出しに先輩が疑問の声を上げる。しかしそれは無視し、俺は言葉を続ける。 「当時優等生だった神無月がいなくなって、俺は目標を見失ってしまった。何をしていいかわからなくなって、悩んで……でも、気がついたんだ」 「……気がついた?」 「俺は自分が悩んでいることさえも見えていなかった……て、ね」 先輩が息を呑む。きっと今の自分に照らし合わせているんだろう。 先輩は悩んでいた。自分にとってとてつもなく重い選択肢に悩み、そして答が見つけられず今日のデートにすがった。 でも、先輩は、本当は何に悩んでいたのか。そしてどうすべきなのか。それは……。 「それで転校したんですか……?」 先を促す先輩に、俺はうなずき話を続ける。 「ああ。しきり直しをしたかった。自分が何に迷い何に悩んでいるかもわからなくて、それでとにかく場所を変えた。考えながら道を探そうとして、いろいろあって。神無月と再会して、また自分がよくわからなくなって……それで先輩に救われた。俺は悩みながら進んでいくことで答を見つけられると、信じることができるようになった。あのときの事は本当に感謝している」 「そんな……」 「だから俺は先輩の力になってやりたくて、今日こうしてデートに誘ったってわけだ。メイド以外の他の可能性を見せてやりたかった。そのうえで、先輩と話したかった」 「竜ヶ崎様……」 先輩はじっと俺のことを見つめている。その瞳の奥には今、どんな想いがあるのだろうか。少なくともじっと見つめる真剣な瞳に失望も呆れている様子も感じられない。そのことに少し、安心する。でも……。 「それでは私はどうすればいいんですか?」 予想された先輩の問い。そうだろう。こう聞いてくることはわかっていた。それに俺はあらかじめ用意した言葉を告げる。 「悩め」 シンプルに言ってみた。 名土先輩はまたしても絶句。 気まずい沈黙の中、夕陽は沈み始め公園の街灯が灯り始める。 蛍光灯の瞬きに刺激されたのか、先輩が絶句から回復する。 「ちょ、ちょっと待って下さい。竜ヶ崎様は今の私と同じように悩んだんでしょう? それで私に……どうすればいいか教えてくださるのでは……そういうことではないんですか?」 「確かに俺は同じように悩んだけど、俺だってまだいろいろ悩んでいる途中だ。答だって完全には出ていない。だから、俺といっしょに悩め」 そこまで言い切ると、先輩は次の瞬間にはぷっと吹き出した。 「ひどいご主人様です」 言って、クスリと微笑む。 「ご主人様は普通メイドに指示を下さるものです。メイドを迷わせるなんて、本当ならご主人様失格です」 「だから何度も言ってるだろ? 俺は名土先輩のまだご主人様じゃない」 「おまけにいじわるです」 言って、先輩はくるりと背を向ける。 胸のボリュームばかり目がいって気がつかなかったが、先輩の後ろ姿は驚くほどに細く、華奢だった。 「でも、”まだ”、と言ってくださるのですね……」 「先輩?」 「……竜ヶ崎様はわたしが悩んで勝手に答を出してもいいとおっしゃるのですね?」 「あ、ああ。そういうことだ」 なにか切迫したものを感じてしどろもどろに答えると、先輩は振り向いた。 そして、 「好きになっていいですか?」 突然、そんなことを言ってきた。 でもその目があんまり真剣だったから、驚きに逸らさないてすんだ。真っ向から受け止めることができた。 「女の子として好きになってもいいんですか? メイドとしてお慕いし、メイドとしてお仕していいですか?」 「……ああ」 うなずき、答える。余計な言葉は要らない。ただ、はっきりと意志を示せばいいと思った。 「嫌いになっていいですか?」 また唐突に、先輩はそんなことを言う。 「女の子として、嫌いになっていいですか? メイドとしてご主人様に値しない人として、切り捨ててもいいですか?」 「……もちろんだ。それぐらいの覚悟はしている」 また俺は一言と、そして頷くことで応える。 そして、二人で見つめ合う。なにかが繋がったように思えた。俺は浮かんだ想いを言葉にする。 「許可もしないし、拒否もしない。好きにも嫌いにもなればいい。どうしたってかまわない。でも、自分で決めろ。先輩が、自分で決めればいい」 そして俺は先輩に手をさしのべる。 「でも、一人で迷わせたりはしない。だから、進もう。前へ進もう。いっしょに前に進もう……!」 先輩は手を握り返す。 やわらかく細い手。しかしその手は熱く、力強い。そしてその顔に浮かべる表情は輝くような笑顔だった。 大丈夫、だと思った。 先輩の悩みは自分にとっていちばん大切なものを見えなくしてしまうほどに、重いものだったんだ。 でも先輩は忘れない。自分にとって一番大切なことを忘れることができるはずがない 大切だからこそ迷った。だから見失った。でも、そんなに大切なものだから、最後には必ず正しい答えにたどりつけるはずだ。 そう、信じることができた。 そして、この日のデートは終わった。 ・ ・ ・ 目覚ましに起こされ、慌ただしく家を抜ける。 日曜は疲れで昼過ぎまで寝て、そのあとは雑事に追われて忙しかった。 本当に、休まる暇というものがない。 そして今日は月曜。また、あわただしい日常が始まる。 一緒に悩んでくれるヤツはいるし、立ち止まっても相談してくれるヤツもいる。余計に悩みを増やしてくれるヤツもいるが、まあそれはそれ。 悩んだっていい。俺は進む。進みつづける自分を信じて、いつかきっと答を得る。 だから、 「行くかっ!」 踏み出す足は力強く、俺は前へ、走り出すのだった。 |
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