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ラジオ・フェスティバル





守 屋「夏休みも終わって少し物憂げな秋の入り口。
    そんな憂鬱を吹き飛ばすあなたのお昼のお供、
    さあ、始まるよ。
 
    守屋なつみの人生コツまみれーっ!

 
  ずっちゃちゃずっちゃががんがーん(OPテーマ)
 
 

守 屋「こんにちは、パーソナリティの守屋なつみですっ!
    ついに始まりましたこの番組。
    ボクの『タイトル変えてーっ』てお願いは
    却下されちゃったんだよ。
    だから、こんなタイトルいやだって言う人は
    放送室前のご意見箱までお手紙ちょうだいねっ!
    切実に募集中ですっ……って言うかホントにこれでいくの?
    しかも続けるの?
    えと本気? 本気?
    え? ホンキじゃなくて本気と書いてマジと読め?
    うあ、本気(マジ)なんだね……。
    ……さて、気をとり直して放送を続ける放送第一回目の今回は
    ゲストに来ていただきましたっ!
    まずは一人目をご紹介っ!
    一人目のゲストはなんとっ!
    サイレント・フェスティバル準優勝の川波 光音さんだよっ!!」
光 音「こ、こんにちは」
守 屋「こんにちはーっ。今日は”光音ちゃん”って呼んでいいかな?」
光 音「………」
守 屋「あ、ラジオだからうなずくだけじゃなくて、声を出してね」
光 音「はい……」
守 屋「あ、光音ちゃん細いけど澄んだ声してていいな。
    ボクなんか騒がしいだけ、ってよく言われるから
    なんだかうらやましいよ」
光 音「そんなっ……」
守 屋「ふふっ。ボクのことはなつみ……って呼んで欲しいところだけど、
    番組の方針で『守屋』って呼んでね」
光 音「名字で?」
守 屋「うん。ボクはそういうパーソナリティーなんだって」
光 音「そうなんだ」
守 屋「簡単に納得してくれるのは番組的にはいいんだけど
    喜んでいいのかな……。
    それにしても、今日は来てくれてありがとうっ!
    光音ちゃんがゲストに決まったとき、
    正直来てくれないんじゃないかって心配したんだよ」
光 音「わ、わたし気がついたらいつの間にか……」
守 屋「やっぱり光音ちゃんも『アルティマ・スイート』のパフェが
    ギャラなの?」
光 音「えっ!?」
守 屋「あ、光音ちゃんもあそこのパフェ好きなんだ。
    今、目がキラーンって光ったよ」
光 音「え……その……」
守 屋「甘いものは女の子の味方だけど、敵でもあるよね。
    光音ちゃんは細くていいな」
光 音「そ、そう?」
守 屋「さて……もう一人のゲストも小さくてかわいい女の子だよっ!
    隣町の高校から来てくれた、
    胸の薄さでは誰にも負けない最強の王者っ!
    無敵貧乳少女の舞黒こがらさんでーすっ!」
こがら「こんにちはーっ」
守 屋「こんにちはーっ」
こがら「……で」
守 屋「はい?」
こがら「今の紹介はどういうリアクションを期待したものなのかしら?」
守 屋「え?」
こがら「蹴ればいい? 殴ればいいの? それとも両方を全力で?」
守 屋「ひょ……ひょっとして怒ってる?」
こがら「……他にどんな反応を期待してたって言うの……?」
守 屋「だっ……だって脚本にこう紹介しろって!」
こがら「じゃあなにっ! 
    あんたは脚本に書いてあることならなんでもするのっ!?
    例えば”マイクを丸飲みしろ”とか書いてあったら
    やるわけっ!? やるわけねっ!?」
守 屋「う〜ん……それくらいならやるかも」
こがら「面白いわねっ! できるというならやって……わああっ!?」
光 音「えっ……えっ?」
守 屋「……ほら、できたよ〜」
こがら「い、いまどうやったのよ……?」
守 屋「それはもちろん……」
こがら「もちろん?」
守 屋「コツがあるんだよっ!」
こがら「………」
光 音「………」
守 屋「さあ、それではCMだよっ!
    この番組は、目指せ電波で大衆操作っ!
    放送研究同好会の制作でお送りしますっ!
    スポンサーは名前出すとまずいのでナイショっ!
    CMで察してっ!」
こがら「なんなのよこの学校……」






C M「君達の心の中に、天使はいるか!?
    君達の心の中に、女神はいるかっ!?
    君達の天使が、女神が、今ここにっ!
    サイレント・フェスティバル写真集
    『真夏の幻影』
    初夏のひとときを、嵐のように吹き抜けたお祭り。
    その、色あせない思い出を君に……!
    申し込みはサイレント・フェスティバルHPにてっ!」
    





守 屋「さて、それでは……」
光 音「あ、あの……」
守 屋「どうしたの、光音ちゃん?」
光 音「あの、わたし……」
守 屋「あ、わかった。緊張してるんだね」
光 音「そ、そうじゃなくて」
守 屋「うん、わかるよ。ボクもこの役をもらったときは
    緊張で気絶しちゃうかと思ったんだ」
光 音「そうじゃなくて、わたし戻らないと……」
守 屋「でも大丈夫っ! 放送研究同好会に教えてもらった
    緊張を吹き飛ばすコツがあるんだよっ!」
光 音「あの……」
守 屋「はい、手のひらを広げて”人”って三回書いてみて」
光 音「………」
守 屋「書いたねっ?
    そうしたらその手を……」
光 音「手を?」
守 屋「思いっきり……握りつぶすっ!」
光 音「えっ!?」
守 屋「これでもう怖いものなしだよっ!」
光 音「の……飲むんじゃないの?」
守 屋「そうだよっ! 人は飲むより掌握するものだよっ!」
こがら「あ、こっちの学校でもそのやり方なんだ」
守 屋「舞黒さんの方もそうなの?」
こがら「こがらでいいわよ。……なんかこう、握り拳に宿る感覚が
    ”大丈夫”って感じよね」
守 屋「うんうん、緊張なんかしてらんないって感じだよね〜」
光 音「………」
守 屋「さて、それでは質問のコーナーに……って速報だよっ!
    三人目のゲスト、第一関門突破っ!
    諜報活動研究同好会第一陣の被害は気絶3! 軽傷2!
    クリアタイムは3分20秒っ!
    被害数を当てた人は3倍の配当、
    クリアタイムを当て人は2.7倍の配当だってっ!」
こがら「ちょ、ちょっとなんなのよその穏やかじゃない報告はっ!?」
守 屋「今回の放送の特別企画なんだって。
    いくつもの難関を抜けてゲストがやってくるの。
    みんなで被害数やクリアタイムに食券を賭けてるんだって」
こがら「……いったい誰が来るのよ?」
守 屋「ボクも知らないんだ。
    放送に参加してる人にはナイショなんだって。
    で、ゲストが来たらボク達はビックリするっていう企画」
こがら「まあ、誰が来たって恐くないけどね……」
守 屋「さて、それでは今度こそ質問のコーナーっ!
    この質問は事前に各学校のホームページで募集したものだよっ!」
こがら「ふうん……」
光 音「こ、答えなきゃダメなの……?」
守 屋「みんな、ゲストの事を知りたがってるんだよ。
    それでは最初の質問……。

    『朝礼の時、先頭に並ぶようになって
     それが不動の位置になったのは
     小学何年生の頃からですか?』」
    

  ズッパアアアアアンッ!!!


守 屋「わああああっ!?
    いま、音よりも速そうな何かが通り抜けて、
    質問用紙が粉々に……って言うか消滅しちゃったよっ!?」
こがら「………」
守 屋「睨まれてる? ボクなんだかすんごい睨まれてるよっ!?
こがら「………聞きたいこと、ある?」
守 屋「……え?」
こがら「何か・あたしに・聞きたいことは・ある?」
守 屋「は、はは。質問用紙がなくちゃもう質問できないよねっ!?
    もう質問はないよっ!」
こがら「そう。それはよかったわね」
守 屋「よ、よかった? うんうん、よかったね。
    よかったんだよきっとうん絶対そうっ!
    ハァハァ……ちょっと飲み物を失礼……。
    あ、光音ちゃんもこがらさんもどうぞ。
    ペットボトルのレモンティー」
光 音「うん……」
守 屋「き、気を取り直して次の質問っ!
    
    『胸の成長にあきらめを感じたのは
     小学何年生の頃からですか?』」


  パキィッ!!

  
守 屋「………」
こがら「………」
光 音「………」
守 屋「…………ご、ごめん! いま音が消えたけど放送事故じゃないよ。
    ただ、なんだか魂が吹き飛ばされそうな冷たい音がして……。
    わああっ!? ミキサーの斉藤君が引きつけ起こしてるっ!?
    担架タンカたんかーっ! ……ってそうだっ、CM入ってーっ!」





C M「いつもできたて。笑顔であったか。
    学食はいつでもあなたをお待ちしております。
    現在大食いキャンペーン実施中っ!
    限界まで食らえっ!
    残したら敗北者の義務として食券を払えっ!
    その潔さが学生の本分だっ!
    この困難を前に、背を向けるも立ち向かうも君の自由っ!
    意志ある者は、来いっ!! 弁当に逃げるなっ!!
    学食をよろしくーっ!!」




守 屋「みなさんすいません、お見苦しい所をお聞かせしました……。
    って、みなさんも大丈夫?
    とにかく気をしっかり持たなきゃダメだよ」
こがら「あんなすごい音が放送されちゃうなんてね。
    ……今のはあたしもちょっと効いたわよ」
守 屋「こがらさんも?」
こがら「当たり前よっ! あんなのを至近距離で聞いたらっ……」
光 音「コクコク……」
守 屋「光音ちゃん、大丈夫なの?
    のんびりレモンティー飲んでる場合じゃっ……」
こがら「今の音……」
守 屋「え?」
こがら「なんかプラスチックっぽい音だったような」
守 屋「あ、そうだね。なんて言うか、質も大きさも全然違うけど
    ペットボトルを開けるとあんな感じの音が……」
光 音「コクコク……」
こがら「………」
守 屋「………」
光 音「コクコク……」
守 屋「は、はは。ペットボトルの開け方にもコツがあるのかな……?
    さ、さてこの質問もなんだか流れちゃったから、次の質問っ!
    
    『小学生の……』」

こがら「ちょぉっと待ちなさいよっ!」
守 屋「な、なにかな?」
こがら「さっきからなによその質問っ!? 
    内容も内容だけど、小学生からって……
    本気でケンカするつもりなら、
    あたしも本気以上の本気で相手するわよっ……!」
守 屋「そ、そんなつもりは」
光 音「………」
守 屋「み、光音ちゃん? どうしてペットボトルの蓋をしめるところで
    動きを止めてるの? なんだかそれ”構え”てるみたい……」
光 音「………」
守 屋「あうあう……」
こがら「そもそもあの失礼で変でどうしようもない質問は
    誰が出してるのよっ!?」
守 屋「こ、これは匿名だから……」
こがら「ちょっと貸しなさいっ!
    なになに、ラジオネーム
    ”こがらの魅力は小学生の頃に
     完成していたことを伝えたい”さん……あいつね」
守 屋「長いラジオネームだよね……あ、速報っ!
    さっきの騒ぎの間に第三のゲスト、なんと
    第五関門まで突破っ!
    諜報活動研究同好会会長、山岸くん陥落っ!?
    ちょ、ちょっとホントに誰が来るのっ!?」
こがら「……あいつだわ、きっと」
守 屋「え?」
こがら「ちょっと行ってくるわ」
守 屋「本番中に出て行っちゃだめだよーっ」
こがら「一発殴らないことには気が済まないわっ……!」
守 屋「わ、みんな下手に止めようとしちゃダメだよっ!
    いのちは大切にしないとっ……CM入ってーっ!」






C M「サイレント・フェスティバル準優勝っ!
    隠れ人気では優勝の清水先輩以上とウワサされる
    新生アイドル、川波光音っ!
    見たい知りたいその全てっ!!
    時代のニーズに応えて
    
    川波光音ファースト写真集
    『白と黒の天使』
    発売決定っ!
    
    本日放課後より予約受付開始っ!
    メイド服姿もバッチリ収録っ!
    完全予約限定につき、欲しい人は迅速確実に予約ゴーッ」






守 屋「え〜と、こがらさんは本当に行ってしまいました」
光 音「………」
守 屋「どうしたの? なんか固まってない?」
光 音「わたし、聞いてないっ……!」
守 屋「え? なにが?」
光 音「さっきのCMのっ……!」
守 屋「ああ……なんかサイレント・フェスティバルの後は
    毎年こんな感じらしいよ。まあ有名税って事じゃない」
光 音「そんなっ……じゃあ守屋さんも?」
守 屋「ボクは三位と言っても光音ちゃんとは
    結構票に開きがあったみたいだからそういうのないみたいだよ。
    あ、もう一つCMっ!
    今放送中の『守屋なつみの人生コツまみれっ!』は
    放送終了後、学校のHPでMP3形式で一般公開されますっ!
    でも、より高音質を求める君っ!
    CDでの発売があるよっ!
    初回限定は豪華ピクチャーレーベルっ!
    守屋なつみの水着写真プリントで……って聞いてないよーっ!?」
光 音「………」
守 屋「ちょ、ちょっとそんなのないよっ!
    それにこの
    『付属のミニブックレットには素顔の守屋なつみの写真と
     小粋なコツトーク』
    ってなにごとーっ!」
光 音「有名税……」
守 屋「ちょっとスタッフっ! え、出演料は
    アルティマスイートの火山のごとく激しいおいしさで有名な
    『ボルカノン・パフェ』三杯っ!?
    あんな高くておいしーのを三杯もっ!?
    でもでもちょっと待ってっ! あとで交渉っ!」
光 音「有名税?」
守 屋「あ、あはは……」
光 音「たいへん」
守 屋「うん、たいへん。甘いものに負けそうな自分がこわい……。
    って落ち込んでも仕方ないっ!
    次の質問っ!」
光 音「まだするの?」
守 屋「するよ。だってまだひとっつも答えてもらってないんだもの」
光 音「………」
守 屋「ぺ、ペットボトルを構えないでよっ!
    こんどは普通の質問だからっ!」
光 音「………」

守 屋「『いま……好きな人はいますか?』」

光 音「!」
守 屋「これは、みんな聞きたいことだと思うんだ。
    なにしろ光音ちゃんはサイレント・フェスティバル準優勝者
    なんだから……」
光 音「………」
守 屋「ごめん、こんな質問いきなりしても答えられないよね」
光 音「……います……」
守 屋「え?」
光 音「います……好きな人います」
守 屋「あ……ああ、そうなんだっ!
    でも、誰かというのは……言えないよね」
光 音「………」
守 屋「ファンのみんな、誰か分からないってことは、
    もしかしたら君達にも可能性があるかもしれないよっ!
    では次のコーナー……」
光 音「違う」
守 屋「?」
光 音「その人は、私の気持ちを知っているから……。
    だから、それは違う」
守 屋「え、え〜と、ずいぶんはっきり言っちゃうんだね。
    なんだか変なことばっかりで番組になってないけど、
    これ、校内に流れてるんだよ、一応……」
光 音「わかってる」
守 屋「そう、だよね。そんなに顔真っ赤だもん。
    質問しておいていうことじゃないけど、
    別に無理して言わなくたって……」
光 音「でも、いちばん大事なことで……いちばん大事な人だから……」
守 屋「………」
光 音「だから……このことにだけは嘘をつきたくない……!」
守 屋「そう、なんだ……」
光 音「………」
守 屋「ごめんね、光音ちゃん。変な質問しちゃって……。
    それから聞いているファンのみんなも、
    がっかりさせちゃってごめんね。
    でも、でもね。光音ちゃんはとってもいい女の子だよっ!
    とってもとってもいい女の子だよっ……!
    ボクが敵わないのも仕方ないって言うか……。
    だから、だからね。
    ボクは光音ちゃんのこと好きになっちゃったよ!
    なんか、泣けちゃうくらいに……。
    だからファンの人も応援してあげて……はは、ボク
    何言ってるんだろう?
    なんで目の前がぼやけるの? ボク、ボク……」
光 音「………」
守 屋「あ、ありがとう。光音ちゃんの手、暖かいんだね」
光 音「うん……」
守 屋「ふふっ……」


 ゴガアアアアアアンッ!


光 音「きゃっ……!」
守 屋「な、何、今の揺れ? 地震っ!?」
光 音「だ、大丈夫?」
守 屋「うん……すごい縦揺れだったね……あ、速報っ!
    震度はいくつだったの……ってなにこれ?
    第三のゲストついに倒れる……謎のポニーテールの一撃……?
    地震のことはっ!? え? これがそうなのっ!?
    いったいどうなってるのーっ!?」
こがら「ただいまーっ」
守 屋「え? あ……おかえりなさい」
こがら「まったく……人違いだったわ」
守 屋「え?」
こがら「まったくの無駄足ね。まあいいわ。あとで倍殴ってやるから」
守 屋「あ、あのお……」
こがら「な、なによ。あたし別に残念じゃないわよっ!
    一人でよその学校来て心細くなんかないし、
    もしかしたらついてきてくれてるかもなんて
    期待もしてないわよっ!」
守 屋「話がさっぱりわからないんだけど……」
こがら「え……えとその……そんなことより
    番組をちゃんと進めなさいよっ!
    さっきからなにやってるのよっ!?」
守 屋「怒られた……なんか理不尽……」
こがら「さあとっとと働くっ!」
守 屋「じゃ、じゃあこがらさんにも質問。
   
    『いま好きな人はいますか?』」

こがら「だからあいつはいなかったんだってばっ!」
守 屋「え?」
光 音「?」
こがら「え……あ、な、なんでもないっ! 言い間違いっ!
    そんなのいないってばっ!」
守 屋「………」
こがら「なによその”ハハーン”って感じの目はっ!
    感じ悪いわねっ!」
守 屋「じーっ」
こがら「な、なによなによっ! あんたもなにか言いなさいよっ!」
光 音「あ……」
こがら「なによ、放送室になにが……あ!」
守 屋「あ、高坂くんだ……どうして?
    なんだか怪我してるみたいだよっ!?」

雅 弘「やっと……やっとついた……!」



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