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おねえちゃん忘れてるっ!

その3

おねえちゃんが
お洋服に大事なことを
忘れてるっ!




「どう、似合う?」
「……ここ普通のお店よね?」
「うん? そうだけど」
「見た目確かに普通なのに……どこにそんな
 ゴシックロリータな服があったの?」
「えへへ〜、かわいいでしょ?」
「だめだめそんなの却下!」
「え〜」
「ほら、こっち! わたしの選んだこの服着てみてっ!」
「うん……あ、いい色だね」
「こういう普通のを選んでよね」
「じゃ、着替えてみる」
「はいはい、ちゃんと試着室のカーテン閉めてね」
「うんっ」
「やれやれ……おねえちゃんのセンスって微妙に変だから、
 服買いに行くときはついてかないと不安で仕方ないわ」
「んしょんしょ……」
「それにしても……それなのに……なんでなのかなあ……たまんないよ」
「………」
「ずるい、なぁ……はあっ……」
「どうしたのっ!?」
「わあ、おねえちゃんっ! 着替えてる途中じゃっ……
 ってなに下着姿で試着室のカーテン開けてんのよっ!?」
「だって切ないため息が聞こえたからっ……」
「べ、別にため息なんてっ」
「うそうそうそうそうそおっ!
 おねえちゃん、ちゃんと聞いたんだからっ!」
「そ、空耳よっ」
「うそ〜〜〜」
「目の錯覚よ」
「それはもっとうそ〜〜〜」
「わ……わかったわよっ! ため息はついたっ! つきましたっ!
 ……だから何なのよ?」
「話して」
「え?」
「悩み、あるんでしょ」
「……話せない。おねえちゃんにだけは、絶対」
「そんな〜」
「な、泣きそうな顔しないでよっ」
「ううう〜〜〜」
「そ、そんな目で見るなんてずるいっ……」
「話してよ〜」
「はあっ……話すしかないみたいね」
「うん♪」
「……大した事じゃないの。おねえちゃんの胸、
 大きくていいなあって……ただそれだけ」
「それだけ?」
「それだけ……それだけそれだけそれだけよっ! なによ、文句あるっ?」
「文句はないけど〜」
「ないけど?」
「胸が大きくてもいいことなんてないよ」
「! 余裕のある人はすぐにそういうこと言うんだからっ……!」
「ち、違うよ。そうじゃなくて……大きいと肩だってこるし、
 似合う服だって少なくなっちゃうんだよ。
 男の子も変な目で見るし……」
「ほら、見てもらえていいじゃないっ! うらやましい限りよっ」
「そうじゃなくって……どっちがいいとか悪いとかじゃなくて、
 ”違う”だけだよ」
「違う?」
「そう、”差”じゃなくて”違い”。
 大きい胸だといやなこともあるけど、いいこともあるよね?
 モモちゃんみたいに控えめな胸だって、
 わるいことだけじゃないでしょ?」
「………」
「それにね……モモちゃんはすっごくかわいいよ。
 おねえちゃんの自慢の妹だよ」
「おねえちゃん……」
「だから、ね」
「うん。わかった。もうこんなことでため息つかないから……
 だから、もう……」
「ん?」
「早く試着室のカーテン閉めてよっ!」
「あ……わあああっ!?」
「ホントにもう、おねえちゃんってばわたしがついてないと
 ダメなんだから。わたしのこと、真剣に心配してくれるのは
 いいけど……」
「おねえちゃん、モモちゃんのこと大好きだから……」
「独り言に答えないでよっ!
 こういうときは聞こえても無視するものよっ」
「ご、ごめんなさあい……」
「でも、いいわ。わたしもおねえちゃんのこと大好きだから……」
「え?」
「だから独り言に答えないっ!
 それよりおねえちゃん……さっき試着室のカーテン開けたとき、
 どうしてパンツはいてなかったの?」
「ドキッ!」
「洋服の試着に下着まで脱ぐ必要はないわよね?」
「えとその……」
「まさか、家を出たときからはきわすれてた、なんてことないわよね?」
「あのあの……」
「もしそうだったら……どうしてくれようかしら?」
「あうあうあう〜」
「………」
「………」
「クレープ」
「え?」
「帰りにクレープおごってくれたら許したげる。
 買い物につきあってあげた報酬と思えば、安いもんでしょ?」
「そ、それでいいの?」
「わたしがチョコで、おねえちゃんがストロベリー。
 二人で食べっこしよう」
「うん!」
「ほんっと、おねえちゃんってばしょうがないんだから……」
「えへへっ」




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