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 新ジャンル「変態古風」より

 古風な彼女は縛られたい
 その弐


・ヤツがやってきた
「……なあ、ちょぉっと説明して欲しいんだが」
「はい、なんでしょう」
「一週間も前から姿を消して……今までなにやってたんだ?」
「いろいろ準備がありまして」
「ほほぉ、準備かあ……」
「ああ、旦那様。思わずときめいてしまいそうな恐いお顔……!」
「お前なあっ……!」
「! か、肩に手を……?」
「ふざけんなこのやろーっ!」
「ああ、ゆさぶられるぅ!」
「変な声あげてないで! この状況を! 説明しやがれぇっ!」
「ああっ、ああっ、ああっ……いいっ!」
「ん?」
「もっと揺さぶってください!」
「へ?」
「もっと激しくしてぇっ! 無茶苦茶にしてぇっ……ああーっ!」
「………」
「ど、どうしてやめてしまうのですか……?」
「あの、すみません」
「は、はい!?」
「いきなり現れたと思ったらトラックなんかで乗りつけてくださりやがり、
 いきなり家にガンガン荷物運び込みなさりやがってるのは
 いったいどういう理由と事情によるものなのかお話しやがって
 くださりませんかっ……!」
「ああ、旦那様……丁寧な言葉遣いとは裏腹に伝わってくるこの熱さ!
 その内に秘めたる怒りの炎の熱さに、あぶられるようです……素敵……!」
「お話やがってくれませんかっ……!」
「もう少し楽しみたいところですけど……仕方ありませんね。
 ですが、事情を説明しろと言われましても……
 ただ、嫁入り前の準備をしているだけです」
「は?」
「先日婚約を申し込まれたわけですから、
 まずは家財道具から運ばせていただこうかと」
「こ、この大量の荷物は全部お前の家財道具かよっ!?」
「はい。これでも絞り込んだのですが……
 その準備に手間取って、今までお会いできませんでした」
「なんで嫁入り前に荷物運び込むんだよ!? 普通結婚した後だろっ!」
「なにをおっしゃいます!? 結婚前の淫靡にして怠惰な同棲生活は
 今しか味わえないんですよ!?
 そのためにはいろんなものが必要なんです! ええ、それはもうたくさん!」
「………」
「………」
「バカバカしい。そもそもこんなムチャクチャ、親父もおふくろも許すはずが……
 って、なんでふたりとも出てこないんだ?」
「話はついてます」
「は?」
「お金で」
「………」
「………」
「なにーっ!?
 なにやってんだ親父、おふくろーっ!!」
「………」
「どこだ出てこーい!」
「お留守だと思いますよ」
「な、なんだって? でもいない。家中探しても、確かにいない。
 いつの間に……?」
「ですからお金で解決しました」
「か、金って、どうやって……?」
「今頃は空の上ではないでしょうか?」
「!? ど、どういう意味だっ! まさかっ……!?」
「あ、あん、そんなに乱暴につかみかかられると、どうにかなってしまいますぅ……」
「うるさい、どういうことだ言いやがれ!」
「黙っていればもっと乱暴にしていただけるのでしょうか……?」
「〜〜〜〜っ!」
「……わかりました。説明いたします。旦那様のご両親は……」
「俺の親父とおふくろは……!?」
「渡したお金で世界一周旅行に出かけられるとおっしゃられていました。
 あ、こちらが領収書です。旦那様になっとくいただくため」
「うわ……」
「今はおそらく、空の上……飛行機の中ではないかと思います」
「俺に一言も告げずに行ったって言うのか……?」
「旦那様を驚かせたくて、内緒にしていただきました」
「な、なんだ……そういうことかぁ……はぁ〜」
「何を想像されていたんですか?」
「いや、変な言い方するもんだからすげえ不吉なこと考えちまって。
 金の力で拉致監禁とか殺し屋雇ってどうにかしたとか変なことを……」
「まあ! なんてことでしょう!
 常識的に考えてください。そんなことあるわけないじゃないですか」
「そりゃまあそうかもしれないけど、お前に常識は通じないだろ?」
「そんなことありません! 他人を痛めつけても気持ちよくないじゃないですか。
 やはり自分を痛めつけていただかないと……その……いけませんよ?
 これは常識というものです!」
「なにを言ってるんだお前はっ!」
「古風な女ですから」
「相変わらずわけわかんねえっ!」



・呼び名
「ちくしょう、金が絡むんならそのへん親父に確認しないと
 追い返すわけにはいかないな……」
「真面目な方ですね。そんなことは関係ないと開き直るものかと
 心配しておりました」
「俺にだってそのくらいの分別はある」
「では、理性を失って暴れ出して、私を完膚無きまでに陵辱するなんて事は……」
「ありえねえ。って言うかキレてもそんなことするわけないだろ?
 俺のことを何だと思ってるんだ?」
「そうですか……」
「それにしても、二人ともいくらもらったんだ、ちくしょう」
「さあ? でも、一般の方なら人生が変わる額を渡したと、
 お父様は申しておりました」
「なっ!? お前、そんなに金持ちなのかよ……?」
「古風な女ですから」
「……こいついったいどういう人間なんだろう……?」
「旦那様、あまり見つめられると、その……急に身体が火照ってまいりました。
 脱いでもいいですか?」
「やめんか! そ・れ・と! その呼び方やめろ」
「呼び方って……旦那様?」
「そう、それ。やめろ」
「でも、旦那様でしょう?」
「やめろと言っている」
「確かに同棲中に呼ぶのはおかしいかも知れませんね。
 ですが……それならば、なんとお呼びすれば良いのでしょう?」
「今までと同じでいいだろ」
「わかりました。それでは……あ・な・た」
「それもやめろ!」
「でも、今までもそう呼んでおりましたよ? あ・な・た、と」
「え? い、言われてみればそうか。でも、そのアクセントは……」
「そうですね。旦那様という呼び名は結婚のあとの楽しみといたしましょう。
 ね、あ・な・た」
「くううっ……!」
「ああ、そんな悔しそうな目で睨まれますと、やっぱりその……
 脱いだほうがいいでしょうか?」
「なんでそんなに脱ぎたがるんだよっ!?」
「だって……もうあなたの家の中。
 誰の目をはばかることなくいかがわしいことができますでしょう?
 もう、待ちきれなくて……」
「引っ越し業者の人たちがまだいるだろう?」
「じゃあ……服を着たままでなさいます?
 ああ、それも興奮いたしますわね……ふふ」
「ああもうこいつはっ……!」
「ね、あ・な・た」
「うがーっ!」



・引っ越し荷物

「荷物、運び終わりましたーっ!」

「あ、引越し業者さん、最後の荷物ですね。はい……はい、確かに。
 ありがとうございました」
「ようやく運び終わったか。親父とおふくろの部屋が埋まっちまった。
 まあいい気味って感じだが……それにしてもすごい荷物だな」
「はい。古風な女ですから」
「関係あるのかよ……って、なんだよこのでっかいのは?
 なにが入ってるんだ?」
「真之介です」
「は? 真之介って……こ、この中に人が!?」
「まさか。ふふ、冗談がお上手ですね。
 あ、でも……箱の中につめられるというのもいいかも知れませんね。
 窮屈で、息苦しくて、人ではなく犬にすら及ばず、”物”として扱われる……
 ふふ、素敵……!」
「変な想像に走るな! ……で、真之介ってのは何なんだ」
「三角木馬です」
「……は?」
「三角木馬の真之介。昔からの愛用品です」
「そんなもんに名前つけるなーっ!」
「でもいい物なんですよ。形がこう、かわいらしくて。目元が愛らしいんです。
 それなのにまたがるところが容赦なく凶悪で、絶望的に残酷で……
 あの痛み、あの苦しみ、あの屈辱……! はあ、想像しただけど……
 身体がうずいて、熱く……熱く……!」
「………」
「よろしかったら試乗なさいます?」
「するかあっ!」
「あら、残念。脚にぶら下げる重りも用意してますのに……」
「そんなものいらんいらんっ! 実家に送り返せ!」
「送り返すのですか?」
「当然だ!」
「ああそれはつまり……」
「?」
「あの三角木馬よりすごいことをしていただけるということですねっ!?」
「………」
「………」
「アホかっ!」
「あんっ」
「デコピン! デコピン! デコピーン!」
「あうっ、きゃふ、ひああっ!」
「なんだよその悩ましい声!? お前こんなのでもいいのかよっ!?」
「ああ、その見下したお言葉素敵っ……もっと罵ってぇ!」
「うかつに声もかけられねぇ……!」
「そうですね……真之介もいいですけど、この家にはあなたがいるんですものね……
 ふふ……物に頼ってはいけませんよね。ふふふふふ……」
「くそ、こいつと暮らすなんてできるのか?
 だが俺は誓ったはずだ。こいつを真人間にするって……!
 一緒に暮らすってのはかなりアレだが、
 考えてみたら大きなチャンスとも言える……!」
「ふふふふふふふ」
「でも、なんかもう……のっけから、くじけてしまいそうだ……」



・料理ネタ
「さて、そろそろお夕食の時間ですね」
「あ、ホントだ。もうこんな時間かよ! 貴重な土曜休みが……」
「今晩は任せてください。私の料理の腕をお見せいたします!」
「んー、まあそう言うことなら任せるかぁ」
「はい!」





「さあ、お待たせいたしました!」
「へえ、うな重か。豪勢だな。ん? これなんだ?」
「イモリの黒焼きです。添えられているのはニンニクを焼いたものです」
「……これは?」
「スッポンの生き血です」
「なんて言うか、食べたら無駄に精力がついてしまいそうなメニューだな」
「食後には私を召し上がっていただくのですから、その方がよろしいかと」
「………」
「………」
「あー、俺急に食欲無くなってきたーっ! ごちそうさまっ!
「そんな! 食べていただけないのですか?」
「すまないな、ちょっと食う気になれない」
「わかりました……でしたらこの料理は、私が食べさせていただきます」
「ああ、そうしてくれ……って、ちょっと待ったーっ!」
「なんでしょう?」
「やっぱりうな重だけいただくよ。
 スッポンの生き血とかヤモリの黒焼きとかのグロ系は、悪いけど勘弁な」
「はい」
「……あぶないあぶない。こんな精の付くものこいつが食べたらどうなることか……」
「はい、召し上がれ」
「はい、いただきます」
「………」
「………」
「……どうでしょうか?」
「ああ、うまい。料理上手なんだな」
「そんな……料理上手だなんて恥ずかしいです。床上手とおっしゃってください」
「関係ないだろっ!」
「そうですね。そちらは食後にたっぷりじっくり召し上がっていただいて
 ご理解いただけましたら幸いです」
「こいつのあらゆる行動はそっち方面にしか向かないんだな」
「古風な女ですから」
「なんかお前、なんでも最後に古風と言っておけば
 済むと思ってないかーっ!?」



・夜長
「静かだな」
「ええ。月が綺麗……風流ですね」
「ふうん……」
「どうされましたか?」
「なんか様になってるな、って思ってな」
「古風な女ですから」
「まあ、そんな感じではあるな……でも、静かすぎてなんだか落ち着かないな。
 今日はこれと言って見たいテレビもないしなぁ」
「では、音楽でもお聞きになりませんか?」
「ん? CDでもあるのか?」
「そんなハイカラなものはありませんが……楽器がございます」
「楽器? へえ、弾けるのか?」
「いえ。私ではなく、あなたが弾くのです」
「え? でも俺には楽器の心得なんてないぞ。
 学校の授業でちょっとやったくらいで……
 それもリコーダーとかトライアングルとかそんなもんだ」
「はあ。くわえたり、ちんちん音を鳴らしたりしていたわけですね?」
「へんな言い方するな! とにかく、まともに扱える楽器なんてないぞ」
「大丈夫です、お教えいたします。いいですか? こう、手を回して……」
「おい、なにを……」
「手はここ。はい、力を抜いて」
「抜けといわれても……」
「ここです。ここが要所です」
「いやあの……」
「ここを強くつねると、『ひぎぃ』と鳴ります。一番高い音です」
「………」
「ここを撫でると『んふぅ』、ここを叩くと『あひぃ』。叩く際は平手がおすすめです。
 それぞれ強弱をつけることで音階が変わります。
 連続してうまく音を鳴らせば、『らめぇ』という音になります。
 素敵ですね?」
「……で、この楽器の名前はなんて言うんだ?」
「そうですね。あえて名づけるなら……
 淫らでふしだらな私の、被虐のいななき……といったところでしょうか?」
「わけわからねぇよ!」
「今はまだ形のない、あなただけの楽器です。
 あなた好みに、私を奏でてください……」
「アホかっ!」
「きゃはぁん! あ、頭をゲンコツでぶちましたね!」
 変な音が鳴ってしまったじゃありませんか!」
「まったく……」
「あ、でもこんな音は初めて……!
 もっといろんな音があるかもしれません。
 私という楽器を、開発していただけますか……?」
「………」
「ああっ!? なぜ無言で離れるのですっ!?」
「いや、やっぱり夜は静かな方がいいと思ってなあ」
「そんなあ……うう、いけず。にくいお方っ」
「うれしそうに言うなよ」
「静かにしていますから、おそばにいてもいいですか?」
「……静かにこっそり俺のベルトを外そうとする
 その手を止めてくれるのならな……!」
「どうして気づいたんですか……?」
「そりゃばれるだろっ!」
「帯だったら気づかせもせずほどけるのに、
 どうしてこんなのつけてるんですかっ!?
 あんまりですっ!」
「なにわけわかんない逆ギレすんな!」
「古風な女ですから!」
「だから関係ねぇっ!」



・お風呂
「さて……風呂が沸いたけど、お前入るか?」
「とんでもない!
 私はあなたの入った後の残り湯をつかわせていただきますので……」
「なんだよ、遠慮することないのに」
「古風な女ですから……」
「珍しく説得力があるな……まあいいか。じゃあ先に入らせてもらうよ」
「はい……ふふ」





「ふう、いい湯だな〜。
 やっぱり肩こるよな。いろいろあったもんなあ」
「………」
「で……扉開けるなよ? 入ってくるなよ?」
「な、なぜ私が浴場の前にいるとわかったのですかっ!?
 音をほとんど立てず、まだ扉も開けていないから姿も見えないはずっ……!」
「予想してたからな。そろそろだと思ってたんだ。
 実はカマをかけただけだったりする」
「では……浴場の前で欲情していることもおわかりなのですね?」
「それは知らん。って言うかベタだな」
「むう……とにかく、ばれてしまっては仕方ありませんね……」
「繰り返すが……入ってくんなよ?」
「ですが……」
「どうせ『お背中を流しに来ました』とか言うんだろ?
 残念だな。もうとっくに身体は洗ったあと。いまはゆっくり湯船につかってるんだ」
「そんな!? もうですか!?」
「ああ。当然だ」
「まさか、まさか、まさか……! そんなに早いなんて!」
「はっはっはっ、ざまーみろ」
「あなたがそんなにも早い男だなんて思いもしませんでした!」
「へ?」
「早い男なんて最低! うわーんっ!」
「………」
「………」
「あ、おいっ……行っちまったみたいだな……。
 しかしあの言い方……べつにそういう意味じゃないのになんか傷つくなあ……」
「罵倒されるよさがおわかりになりましたか?」
「う、うわ!? まだ風呂場の前にいたのかよっ!?」
「心にうずくその痛み……それがじんわりと快感に変わるのです。
 私がいつもあなたに求めていること……どうです、素敵でしょう?」
「わかんねーよ」
「だったら……もっとくわしくねっとりたっぷりと、教えて差し上げます……!」
「入ってくんなって。もし、本当に入ってきたら……」
「ふふ、どうしていただけるのでしょう……?」
「ほめてやる」
「………」
「………」
「……え?」
「あたま撫でてえらいえらいって褒めてやる。
 そして俺はお前に何もせず風呂から出る。
 身体も洗ったし十分あったまったからな。もう用はない」
「………」
「ほら、入ってきてみろ」
「………」
「どうした?」
「しかって……いただけない……?」
「ああそうだ」
「………」
「………」
「……こ、ここは引き下がりましょう! ですが!
 いつもこううまくいくとはゆめゆめ思わないことです!」
「悪役の捨てゼリフみたいだな」
「古風な女ですから!」
「関係ないだろ! って、もう行っちまったか。
 まったく、おちおち風呂にも入ってられないなあ……」



・おやすみの前に
「そろそろ寝るか」
「はい」
「……なんでついてくる?」
「いえ、その……寝るとおっしゃいましたよね?」
「そうは言っても俺の部屋にはベッドがひとつだけだ」
「ですから、ご一緒いたします」
「………」
「………」
「ダメに決まってるだろう!」
「……わかりました」
「っ? やけにものわかりがいいな」
「あなたのお言いつけでは仕方ありません。床で寝ます」
「は?」
「きっと床は固く冷たく辛いでしょう。
 その横、寝台の上であなたはぬくぬくとお眠りになるのです。
 私はそんなあなたを見つめ、自らの惨めさをより強く痛感するのです。
 ああ、ぞくぞくします……!」
「それはきっと風邪の前兆だ。バカなことはやめろ」
「そうです。体調を崩す私、それなのに苛烈な攻めをやまないあなた!
 想像しただけで私、身体が熱くなって……
 はぁ、本当に熱にうかされているかのようです……!」
「やめんかーっ! だいたい本当に風邪引いたら大変だろ!?
 せめて布団を敷け!」
「……わかりました。仕方ありません。
 不本意なことこの上ありませんが、布団を持ってきて寝かせていただきます」
「まったく……初めからそうしろよな」
「では持ってきますね……」
「あれ? なんかいっしょに寝ることになっちゃってる?」





「さて、寝るか」
「はい。早めに寝ませんとね」
「そうだな、早寝は健康の元だな」
「ええ。それに、早めに眠らないと夜起きれませんからね」
「ん? 夜に起きてなにするんだ?」
「夜這いです」
「………」
「………」
「……まあ頑張れ。俺は相手にしないけどな」
「ええっ!?」
「じゃ、寝よう。電気消していいか?」
「何を悠長なことを……! ほ、ほんとに襲っちゃいますからね!」
「今日一日でようやくわかったけど……お前の目的って俺を『襲うこと』じゃなくて
 俺に『襲われること』だろ?」
「!」
「基本的にMみたいだからな。俺が相手にしない、って言えばそれでおしまいだ」
「そ、そこまでわかっているのですか……!?」
「ああ」
「それなのに、どうして……」
「ん?」
「どうして……優しくするんですか?」
「………」
「………」
「優しくなんてしてない」
「布団で寝るように言ってくれました。私がここで眠ることも、許してくれました」
「………」
「勝手におしかけて、あなたが嫌がるのもかまわず迫って……
 そんな私に、どうして優しくするんですか……?」
「嫌がらせしてるって自覚あったのかよ」
「………」
「本当のことを言うとな、チャンスだと思っている」
「ちゃんす、と言いますと?」
「お前が俺の家に来たことを、お前を真人間にするためのいい機会だと
 思ってるってことだ。
 約束したからな。償うって。できる限りは果たすさ。
 でも、だからって別に優しくしてるつもりはないぞ」
「え……?」
「俺はお前に、当たり前に接してるだけだ。特別扱いしているわけじゃない」
「そんな……」
「だから気にするな」
「気にします……!」
「なにをそんなに……」
「………」
「………」
「……優しくしないで……!」
「え……?」
「私の事なんて、優しくしてはいけないんです……!」
「何を言って……?」
「罵って」
「は?」
「いじめて」
「おい……」
「はずかしめて!」
「おまえっ……!」
「絶望するくらい罵倒して!
 気を失うくらい陵辱して!
 完膚無きまでに蹂躙してください!」
「なに言ってやがるんだお前はっ!」
「せっかくせっかく一生懸命準備したのに!
 無理やりおしかければ、さすがに怒って
 目もくらむくらいひどい折檻をしていただけると期待していたのに!」
「あのなあ……」
「台無しじゃないですか!」
「台無しなのはお前のほうだっ!」
「む〜……!」
「この〜……!」
「もうっ、知らない! 女心のわからない方っ!」
「そんな女心はわからねえよ! でも、そうすると……」
「なんですかっ!?」
「本気じゃ、ないんだな」
「? なんのことでしょうか?」
「結婚だの何だの言ってただろ?
 あれは本気じゃなくて、狂言なんだな」
「いえ、それは本気です」
「どうして?」
「あなたは私の奥底に眠っていた被虐の火を
 炎に変えて燃え盛らせてくれたお方……。
 あなたとなら一生その炎を絶やすことなく暮らしていけると思うのです!」
「あのなあっ……違うだろ。結婚ってのはただ一緒に暮らすってことじゃない」
「ええ。もちろんわかってます。日々休むことなくもうめくるめく陵辱を……」
「そうじゃなくて! その、結婚ってやつは一応、建前上……なんだ!
 一生の愛を誓い合うものだろっ!?」
「はあ……?」
「なに不思議そうな顔してるんだよ?」
「だって……あなたがわからないことを言うからです。
 結婚なんてただの契約にしか過ぎません。
 その理由なんて、肉欲か、政略上の事情か……その二つぐらいのものでしょう?」
「すげえ偏ってるな」
「そういうものですっ」
「違う! 結婚ってのは愛しあってるからするものなんだよっ!」
「!」
「……ってなに恥ずかしいこと主張してるんだ俺は……!
 あ、そうだそもそも……」
「?」
「お前は俺のことが好きなのか」
「え?」
「………」
「………ええと、はい。あなたのそのそそり立つたくましいところが大好きです」
「なにを見ながら言ってる?」
「ナニを見つめながら言っております」
「そそり立ってなんかいないだろっ! 今は通常状態!
 ……いや、夕食のせいか? さすがに今は半分くらい……」
「まあ……うふっ」
「だああっ! だから、そういうことじゃなくてっ!
 人間として好きかとかそういう……恋愛感情があるかどうかって意味でっ!
 俺のことが好きかって聞いてんだーっ!」
「!」
「ん、どうした?」
「………」
「なぜ顔を背ける」
「………」
「なんでそんなに赤くなってるんだ?」
「は……」
「は?」
「恥ずかしくて……!」
「……へ?」
「そんなお話……恥ずかしいです!」
「お前の口からそういう風に恥ずかしいなんて言葉が出るなんて意外だ。
 いつももっとすごいこと言ってるだろ?」
「陵辱と恋愛は違うんです!」
「そりゃ違うと思うけど」
「そういう恋とか愛とかの話は、その……恥ずかしいんです……」
「はあ」
「古風な女ですから……」
「いや、確かに古風ならそうかもしれないけど……え〜?」
「そもそもそういうお話は修学旅行の夜、お布団の中で女同士でするものです!」
「それ古風って言うかなんか違う!」
「も、もう! いけず! 知らないっ! ……おやすみなさい!」
「え? おい……」
「………」
「狸寝入りを決め込むか。なんなんだよ、いつもあれだけ凄いこと言ってるのに
 恋愛経験なかったりするのか……そんなバカな」
「……古風な女ですから……」
「ん?」
「すー……」
「もう寝てる? 今のは寝言か……?」
「………」
「まあいいか。俺も寝よう……」



・朝
「ふあ〜、よく寝た。けっこう眠れるもんだな」
「………」
「こいつはまだ眠ってるか」
「ん……ん〜……」
「寝顔だけならかわいいんだけどな……」
「……あ……」
「よ、おはよう」
「おはようございます……」
「よく眠れたか?」
「ええ……ぐっすりと……ふふ」
「? なにがおかしいんだ?」
「いえ……こんな目覚めもいいものだと思いまして……」
「や、その。なんか照れるな」
「殿方に視姦されながら迎える朝の、なんと官能的なことでしょう……!」
「……は?」
「あなたの想像のなかで、私はどんなにみだらでいやらしかったことでしょう。
 ああ、想うだけで身が震えます。ふふ、ふふふふ……!」
「そんなん想像してねえ!」
「ですが! ひとつだけ言わせていただきます!」
「な、なんだよ」
「現実の私は、あなたの想像の私よりずっといやらしいです!」
「は?」
「古風な女ですから!」
「いや、関係ないし!」
「なんなら今すぐにでも試していただいて結構です。
 さあ! さあ! さあさあさあ! どうぞ!」
「わかった。それじゃやってやる」
「え?」
「ん……」
「あ……」
「俺が考えてたのはこのくらいだ」
「今、何をしたんですか?」
「ちょっとおでこにチューしただけだよ」
「!」
「? なんだよ真っ赤になって」
「うそ……やだ……どうして……?
 ただの口づけで、こんな……?」
「?」
「なんでこんなに恥ずかしいんでしょう……?」
「もしもーし、どうしたんだよいったい?」
「!」
「な、なんだよその目は? 怒ったのか?」
「す、すみません! 少し一人にしていただけますか!」
「へ?」
「で、出てってください!」
「だってここ俺の部屋……」
「女は朝の準備にいろいろあるんです! ですからっ……!」
「わ、わかったよ」
「………」
「う〜ん、部屋を追い出されてしまった。
 っていうか俺もずいぶん恥ずかしいことしちまったなあ……
 でも、本当に寝顔がかわいくて……ああいうことしたいと思ったんだよなあ……」



・朝食
「………」
「よお、おはよう。もう大丈夫か」
「え、ええ。先ほどは取り乱してしまい申し訳ありません……」
「まあその、俺も……変なことしてすまなかったな」
「いいんです。ですが……」
「ですが……?」
「するのなら、もっともっと変なことをしてください。
 鞭とか蝋燭とか、方法はお任せしますから……」
「お前は朝から何を言っているんだ」
「ああいうのは……その……困ります!」
「な、なんでだよ」
「古風な女ですから……」
「その言葉はいつもどおりなんだけど、なんかこう……まあいいか。
 それより! テーブルにつけ。朝飯はできてるぞ」
「申し訳ありません。本来なら私が用意しなくてはいけなかったのに……」
「その辺の分担、今後どうしような……。
 で、見てのとおりトーストと目玉焼きなんだけど、お前、こういうの大丈夫か?」
「洋食ですか。あまり食べたことはありません。
 ですが、あなたの出すものだったら
 たとえ犬のえさでも四つんばいになって喜んで口にいたします」
「なにげに失礼なこと言うなよ!」
「それで、どうしましょう?
 このテーブルの下で這いつくばって食べればいいのでしょうか?」
「だから席に着け! そして手を使って普通に食べろ!」
「そうですか……わかりました……」
「なんでそんなに残念そうなんだよ……!」
「では、いただきます」
「はい、いただきますっと」
「あの、すみません……」
「なんだ?」
「この、”とおすと”、ですか? どうやって食べるものなのでしょう?」
「ああ、ハシは使わなくていいよ。こう、手で持って食べるんだ」
「まあ! 口に直接くわえて……歯を立てろと!」
「やっぱりトーストはやめておくか?」
「いえ、挑戦してみます……! でもこんな大きいの、口に入りません……」
「食べづらいようだったら、手でちぎれよ」
「そうですか! 手を遊ばせて置いてはいけませんよね。
 口でばかりではなく手もきちんと使わないといけませんよね」
「ほんとそういうの食べたことないんだな」
「ええ、こういうことは初めてで……では、いただきます」
「はいはい」
「こふっ」
「? どうした?」
「いえ、食べなれないもので……飲み込むとき変なところに入ったようです。
 むせてしまいました」
「大丈夫か? ほら、牛乳」
「はい。んく、んく……はあ、おいしいです……」
「おいおい、口の端からちょっとこぼれてるぞ」
「まあ申し訳ありません……私としたことがはしたない。
 ちゃんと全部飲みますから」
「………」
「? どうかされましたか?」
「さっきからわざとやってないか?」
「はい?」
「なんか会話が微妙にやらしくなっているような気がするんだが」
「そうですか? でも私はいつもいやらしいですから、
 今だけそうだとおっしゃられても、なんとも申しようがありません」
「そんなあっさり言われても……」
「古風な女ですから」
「だったらもっと行儀よく食べろ!」
「はい。あら、この目玉焼き素敵……半熟で、とろりと垂れて……
 ふふ、はしたない……」
「まったく……でも、ようやくいつもの調子って感じだな
 でも……なんかこいつはこうしてるほうが安心するような気がする」
「ふふ……ふふふふ」
「俺、おかしいのかな……?」



・お洗濯
「さてお洗濯ものを干さなくては!」
「そ、そんなことしなくていいよ! っつかいつの間に洗ったんだよ。
 うわそれは俺のパンツっ!」
「いえ、こうしたことは女の仕事です」
「うう、そうか。そういうなら……」
「そして仕事が終わったところでおしかりください」
「え?」


『なんだこのしみは』
『そんな、染み抜きはちゃんとしたはず』
『嘘を吐け、真っ黒じゃないか?」
『そんな……え? あなたの手にあるそのお醤油は?』
『この俺に口答えするつもりか?』
『い、いえ、そんなつもりは……』
『上の口は謝罪か。だが……こっちは違うじゃないか、んん?』
『あっ……そっちの口はっ……!』
『ほらほら、どんどんシミが広がるじゃないか?
 まったく洗濯ひとつ満足にこなせないとは、使えない女だな』
『あ、あ、だめっ……だめえっ……!』


「おーい、そろそろ戻ってこーい」
「はっ!? す、すみません。つい一人芝居に熱が入ってしまいました」
「まったく……」
「………」
「そんな期待した目で見てもしかったりしないぞ。放置だ放置」
「『ほおちぷれい』ですねっ!?」
「目を輝かせるなっ!」
「じ〜……」
「ええと、そのなんだ! そういえばお前の着物は干してあるのに
 下着はないんだな」
「え?」
「うっわ話題そらすにしても俺なんてことをっ……!」
「興味がおありですか?」
「い、いやその……」
「下着ならございません」
「へ?」
「私は下着をつけませんので」
「そ、そうなのか?」
「下着をつけてると、その……縄をしばるとき邪魔になりますでしょ?」
「さらっと異常なことを言うな!
 ってよくよく見たらあたりまえのように縄が干してあるっ!?」
「その……濡らして汚してしまうこともありますし……」
「たくさん干してあるな。うわあ……なんがすげえシュールな光景だ……」
「そうですね、でも……」
「?」
「あなたが下着で興奮を覚える特殊な性癖の方なら、私、努力します」
「するな!」
「ちょうどこんなお手紙も届いていましたし」
「ってそれ、たまに届くエロダイレクトメールッ! しかも下着のやつかっ!?」
「西洋の下着はなじみがありませんが、繊細な意匠ですね。綺麗……」
「うわ、ちょっとこれすごくないか……!」
「これなんかよさそうですね。ここ、開くようになってますよ。
 ふふ、どんなことに使うんでしょうね?」
「……!」
「……想像しましたね?」
「! い、いやその!」
「私が着た姿を」
「!」
「ま、いやらしい」
「〜〜〜〜〜っ!」
「そうですね……そういうことならいくつか注文しておきましょうか?」
「しなくていいっ!」
「ふふ、本当に……よろしいんですか?」
「い、いらないよそんなもん!
 それに、お前は着物が一番似合っててかわいいんだから、
 安易にそういうもの買うなよっ!」
「!」
「……ってなに俺また恥ずかしいこと言ってるんだーっ!?」
「………」
「な、なんだよ。黙るなよ」
「どうして……?」
「ん?」
「強く叱られたわけでもないのに、酷く罵られたわけでもないのに、
 どうしてこんなに胸が高鳴るんでしょう……?」
「大丈夫か?」
「! そ、その、なんでもありません!
 では残った洗濯物を干さなくては!
 さあさあ、殿方は休んでいてください!」
「なんだよ急に……」
「古風な女ですからっ!」
「わ、わかったよ……へんなヤツだなぁ」
「………」



・新しい目覚め
「おーい、どこいった……って」
「すー……」
「なんだ、こんなところで寝てたのか。
 居間のソファーなんかで寝やがって。風邪引いても知らないぞ」
「すー、すー……」
「………」
「ん……くー、すー……」
「ほんと、寝てるときは普通に可愛いのになあ……」
「はっ!? あ、あれ、私……?」
「や、おはよう」
「! も、申し訳ありません! 掃除をしていたはずなのですが、
 いつのまにか眠ってしまっていたようです……」
「や、気にすることはねーよ。昨日からバタバタしてたからな。
 疲れが出たんだろ」
「そんな……朝に続いて、また眠る姿を視姦していただくなんて……」
「だから! そんなことしてねーっ!」
「はぁ……それにしても……」
「ん、どうした?」
「こんな穏やかな日は初めてかも知れません……」
「そうか? 普通だろ?」
「そうなのですか……? 私は初めてです……」
「なんか大変そうだな。普段そんなに忙しいのか?」
「ええ……内からわき上がる情欲の炎に身を焦がす毎日です!」
「あー、そうかよ」
「こんな静かで穏やかな時間があるなんて……」
「退屈か?」
「そんなことはありません」
「やけにはっきり言うな」
「だって、あなたがいますから……」
「!」
「……どうして赤くなるのですか? 私なにかいやらしいこと言いましたか?」
「い、いやその……お前はやらしいときしか赤くならないのかよ?」
「古風な女ですから」
「お前はっ……! ま、お前らしいけどな」
「? あまり突っ込まないんですね」
「だんだん慣れてきた」
「きちんと突っ込んでいただかないと、いくものもいきませんよ?」
「まったくお前ってやつは……」
「それより……あなたが立たれているのに私が座っていては困ります。
 隣、座っていただけませんか?」
「……ま、いいか。せっかくだから俺もゆっくりするか」
「さ、楽にしてください」
「ああ。う〜ん、確かにここ日当たり良くて、居眠りにはいいな」
「さ、もっと楽に。胸元もゆるめるとくつろげますよ?」
「そうだな」
「下は脱いだ方が楽ですよ?
 ほら、ここが窮屈そう……今、自由にして差し上げますからね」
「やめんかっ! お前が来てからずっとドタバタしてたから俺だって疲れてんだ!
 休ませろ! お前も少しはじっとしてろ!」
「はあ……じっと、ですか」
「ああ。俺の隣で座ってればいいんだ」
「………」
「………」
「あの……退屈じゃありませんか?」
「お前さっき、俺がいるから退屈じゃないって言ったろ?
 俺だって同じだ。お前がいれば、退屈しない」
「でも……今はいるだけで、何もしていませんが……」
「それでも、だ」
「………」
「………」
「………」
「うあっ」
「どうされました?」
「俺、すげえバカなことに気づいちまった……!」
「?」
「俺が、お前が家にいることを認めてるのは……
 お前を真人間にするためだとか、償うためだとか言ったけど、
 あれは建前だったみたいだ……!」
「では……本心ではやはり、私のことを思うままに陵辱するため……
 ということですか?」
「……まあそれも否定しきれねえなあ……」
「え、ええっ!?」
「なぜ驚く?」
「だって今までっ……
 もしかして、そういう趣向で私を焦らして楽しんでらしたのですか?
 ……高度ですね」
「いやそーじゃなくて……なんていうか、こうしてたら気づいたんだけど、な。
 ただ隣にいて、それで落ち着いて、でも退屈しなくて……
 そんな時間がずっと続いたらいいな、とか思った。これってつまり……」
「つまり……?」
「お前のこと好きだから、ってことらしい」
「!」
「……お前恋愛話になるとすぐ真っ赤になるんだな」
「だって……そんな……おかしいです!
 私みたいな淫らでいやらしい女に恋愛感情を抱くなんて、あなたおかしいです!
 頭が変です!」
「ひどい言われようだな」
「女の隣にいていやらしいことを考えもせず恋愛に心を奪われるなんて、
 男としてもおかしいです!」
「いや普通だろ普通! それにそっちのことまったく考えてないわけでもないし……」
「とにかく! あり得ません!」
「なんだよ、その断言っぷりは」
「だって、絶対あり得ませんもの!
 となりにいて落ち着いて、それがずっと続けばいいって……
 そう思うだけで好きだって事になったら……」
「なったら、なんだよ?」
「私も……あなたのことが好きだと言うことになってしまいます」
「………」
「………」
「そ、そうか……」
「な、なんですかその気まずそうなのにうれしそうな顔はっ!?」
「いや、だって……なあ?」
「れれれ恋愛感情なんて一時の気の迷いなんですよっ!
 今すぐ私のことを押し倒して無茶苦茶にしてください!
 そうすればわかりますっ!」
「そんなことしたらこの気持ちが余計に止まらなくなると思うんだが……」
「なんでですかっ!?」
「わかれよ!」
「わかりません!」
「じゃあこうだ!」
「ん……んんっ!?」
「………」
「………」
「ど、どうだ。わかったか」
「………」
「い、いきなりキスなんてしてすまなかったな。
 でも、こんな風にキスするだけでこんなにドキドキするんだぞっ!
 それでお前の言うようなことまでしたら……大変なことになるだろっ!?」
「………」
「おい? どうした」
「……大変です」
「へ?」
「濡れました」
「は?」
「それも、尋常じゃないくらい盛大に」
「なに言ってんだお前はーっ!?」
「本当……なにをいっているのでしょうか、私……
 こんなの初めてです。罵られたわけでもなく、痛みを与えられたわけでもなく、
 強い性的快感を受けたわけでもないのに、こんなになってしまうなんて……」
「………」
「これが恋なのですかっ!?」
「確かに女の子の方がその場の雰囲気とかで感度が変わるって
 聞いたことがあるような気もするけど……」
「これが愛なんですねっ!?」
「その、なんてーか」
「わかりました! 私、頑張ります!」
「は?」
「あなたと愛を育くみます!」
「お、お、お……おおっ! ついに真人間にっ!?」
「愛を育んで、もっともっといやらしい女になります!」
「は……?」
「こういう感覚は初めて……これが愛……私の知らなかった秘め事……!」」
「ちょっとマテーっ!」
「これから、よろしくお願いいたします」
「いや、三つ指ついてお願いされてもっ……!」
「私、古風な女ですから……こんな風な頼み方しか知りません……」
「だからっ……!」
「駄目、でしょうか……?」
「!」
「………」
「……駄目なわけあるかよ」
「では!」
「くそ、これが惚れた弱みってやつかよ!
 明らかにヤバイこの申し出を断れないっ……!」
「では、さっそく!」
「うっわいきなり抱きつくな!」
「私の現状はご存知ですね?」
「あ、ああ……?」
「辛抱たまりません!」
「えぇえっ!?」
「もう身体が熱くて、熱くて……! はやくどうにかしちゃってください!
 その……恋とか愛とかで!」
「うわ変わってねえ! お前のことは好きだけど……それはそれとして
 やっぱりちゃんと真人間になって欲しいんだよっ!
 これじゃ今までと変わらないだろっ!? やめれー!」
「やめれません!」
「どうして!?」
「だって……」
「だって……?」
「古風な女ですから!」
「やっぱり最後はそれかーっ! うわだから巧みに服を脱がすな
 やーめーろー!」


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