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超鋼機装
ダークスティール 第一話 月夜に出会って | 一月の半ば、夜の空気は冷たい。 澄んだ冬の空。いくつもの星が瞬いている。 寒々とした空気が、その輝きをより美しく見せる。 夜。深夜と呼ぶに近い時間。そんな中を一人の少女が足早に歩んでいた。 腰まで伸びた真っ直ぐな髪が揺れる。夜の闇に溶けそうなほど曇りなく黒く、街灯の明かり跳ね輝く。 その手に提げたコンビニ袋が揺れる。一杯に詰まったそれは、静かな町中で小さいながら賑やかにビニールのこする音を響かせる。 その歩みも少し揺れる。背の低い少女には大きく感じられるビニール袋がその原因のようだ。重そうなそれを片手で支えている。両手で持たないのは、もう片方の手にも小さな紙袋を抱えているためだ。 「はあっ……」 息を吐くと、真っ白に染まり満天の星の中に消える。わずかな吐息の残滓が少女のかけたメガネの端を曇らせ、それもすぐに冬の冷たい空気に融ける。 「バレンタイン前とは言っても、さすがにバニラエッセンスを売っているコンビニは限られますね……」 呟きながら、少し重く感じられる袋を持ち直す。少女の背の低さのせいもあり、袋はより重そうに見えた。袋の中には、言葉に出したバニラエッセンス以外にも生チョコや香料といった食材が入っている。 少女の名は、守屋あきの。 腰まで届く真っ直ぐな黒髪。やや野暮ったい黒縁のメガネは硬い感じがするが、あきのの纏うどこか穏やかな雰囲気がそれをあまり感じさせない。 整った小顔と大きな瞳がが幼い印象を与えるが、れっきとした高校一年生。それももう3学期には入り、あと三ヶ月も経たないうちに二年生になる。 「疲れましたね……」 ふと脇を見ると、小さな公園がある。 団地の隙間にある、道のように細く小さな公園。ベンチの他には申し訳程度につくられた小さな砂場と滑り台しかない。 人気はなく、街灯が寂しくと持っているだけだった。 「やっぱりここで食べてしまいましょう。おなかが減っては力が出ませんし、ね」 チラリと左手に持つ紙袋に目をやると、あきのはベンチへと向かった。 ベンチに腰をかけ、脇に落ちないよう気をつけながら中身の詰まったビニール袋を置く。 そして紙袋に開けると、むあっ、と湯気が立ち上る。中には三つの肉まんが入っていた。 「では、いただきま……」 あたりをきょろきょろと見回す。小さな公園は見回すまでもなく、誰もいない。 最近、この町では妙な事件があった。 道に大穴が開く。ブロック塀がまるで車でもぶつかったように崩されている。鉄製の電灯が電球をのこして消え失せるなどなど。 暴走族の仕業、精神異常者の犯行、研究所から逃げ出した怪物がいる……ウワサは枚挙にいとまがない。その理由は場所がまちまちでしかもその現場はただ壊れているというだけでなんの意図も感じられず、そもそもどうやってそんなことをやったのかも分からなかった。 だが、この辺りは事件の現場のいずれからも離れている。そもそもその事件では、ものは壊れても人が怪我したという話はない。 「大丈夫、ですよね……」 誰もいないことをあらためて確認すると、安心して肉まんにかぶりつく。 取り出す前から満面の笑顔だったが、肉まんを口にするとあきのはより一層幸せそうな表情になった。 「やっぱり寒い日に食べる肉まんは最高ですね……」 しばらく、ゆっくりと暖かな肉まんを味わう。 ふと空を見上げる。冬の空は澄んでいて、星の輝きが美しい。こんな美しい夜。 冷たく寂しく、でも綺麗な夜に……。 「わたし、なにをやっているんでしょう……?」 あきのは毎年一月からバレンタインの準備を始める。小さい頃、初めて手作りでチョコレートを作ったがそれが大失敗。そのことをきっかけに毎年充分な準備期間をおいてからつくるようになった。それはずっと続き、高校一年の三学期を迎えた今、腕前は本職に匹敵するほどになっていた。 今夜は特に熱中してしまい、チョコ作りは夜まで及んだ。そして新しい作り方を試そうとしたところ……材料がないことに気がついた。別に急ぐ必要はなかったが、そのままあきらめてしまうのもどうにも気持ちが悪い。バレンタイン前のコンビニは意外とそういうものを揃えている場合もあり、買うこと自体はできる。 そして買いに出かけ、その帰り道だった。 その行為自体はこの年頃の女の子ならそう珍しいことではないかも知れない。 だが、問題は今年本命チョコを渡す相手がいないことだった。 今年と言うか去年も一昨年もいない。本命チョコを渡したのは幼い頃の失敗一度きり。それからは少し臆病になってしまい渡すことができていない。そもそもそこまで男の子のことを好きになることもなかった。 ただ、毎年つくるチョコレートは家族に振る舞えば喜ばれた。クラスメイトに手作りの義理チョコを渡したこともあったが、一度勘違いされて以来やめてしまった。したがって今現在あきのの手作りチョコを味わえるのは家族だけということになる。 だから、こんな夜にわざわざ材料を買いに行く必要はない。まだ一月の今から準備を始める必要だってなかった。 「でも、いつか大切な人ができるかもしれません。その人にはおいしいチョコレートを渡したいですし……」 いつの間にか俯いていた顔を上げ、再び星空を見る。 その時、遠く、なにか音が聞こえた。まるで車が正面衝突したような重く響く大きな音。 音の大きさからそんなに遠くはないようだったが、でも、よくわからなかった。 次に聞こえたのは風を切る音。今度はハッキリ聞こえる。何しろ少しずつ大きくなっているからだ。近づいてくる。 空から、近づく音。 目を凝らす。満天の星空。その一点、星が遮られる。染みのようにその範囲は広がる。 そして、それは落ちてきた。 落下の衝撃。殴られたような重く乱暴な衝撃。その生み出す、ただただ大きい轟音。 震動にあきのの小さな体はベンチから投げ出される。コンビニ袋は地面に転がり中身を盛大にぶちまけた。 だがそれらの音も轟音にかき消される。 やがてそれもすぐに止み、静寂が戻る。 「あたた……なんです……?」 眉をしかめながら、あきのはゆっくりと身を起こす。すこしお尻が痛いが、それを除けば怪我はないようだった。気がつくと左手にはしっかり肉まんのはいった紙袋があった。まだ中には二つも肉まんが残っている。 「だからって……」 苦笑する。こんな時にも手を放さないなんてどうかしている。 右手を見れば、そこにはやはり食べかけの肉まんがしっかりと握られていて……。 「え?」 右手が薄緑色にぼんやりと光っている。光は手の甲から出ているようだった。 手をひっくり返してみてみる。 息をのんだ。 長さ二センチほどの緑色の石。脈打つように明滅する石が、手の甲に刺さっていた。だが、痛みはない。血も出ていない。ただ、刺さっていた。 「やっ……!」 慌てて抜こうとする。しかし左手が紙袋で塞がっている。一瞬の躊躇。 その間に石は、まるで水に落ちるようにあきのの右手の中に沈み……消えた。 「あ……あれっ!?」 いくら手をひっくり返しても、もう緑の石はなかった。光も消えている。 「夢でも見たんでしょうか……?」 そうかも知れない。揺れたのも全部夢で、うとうとしてしまった自分がベンチから落ちただけ……混乱する思考の中、あきのは強引にそう考え、確かめるべく周りを見る。 しかし、目の前には異様なものが転がっていた。 通り道のように細く小さな公園の中央と通っていたのは石畳の通路。その真ん中を潰し陥没させ、人のカタチをした何かがうつぶせに倒れ込んでいる。 闇に溶けるような黒。鉄の輝きをもつそれは、人だとすれば背丈は二メートルほどだろうか。外見は全身に甲冑でも着込んだようだが、全体的な印象は無機質ではなく、どこか生物的だった。 人のカタチ。 その認識が、あきのを行動させる。 「だ、大丈夫ですかっ……!?」 もしこれが作り物ではなく人間なら、通路が陥没するほどの衝撃だ。たとえ甲冑を着込んでいようと命に関わる。あきのは慌てて声をかけ駆け寄る。 答えるように、それは動き出した。 ギシギシと軋みながら、歯車のかみ合う音を立て、ゆっくりと起きあがる。 うつぶせから四つん這い。そして上げた顔は……。 「ひっ……」 あきのは息をのみ、立ち止まる。 その顔は、直線的なデザインの鉄の仮面だった。細く鋭い形をした目。牙のように口元に立つ装甲。なにより後ろに伸びる一本の角が連想させるものは……。 鬼。 鬼の顔だった。 しかしあきのを驚かせたのはそれだけではない。その鬼の仮面の額に埋め込まれた石。細長い楕円のその石が、緑に輝いていたからだ。 息づくように光を放つ緑の石。先ほどあきのの手に入ってきた石と同じだった。 そしてその石は、完全な楕円形ではなく欠けている場所があった。ちょうどさっき、あきのの手に刺さっていた石がはまりそうな大きさで欠けている場所があった。 『力が……足りない……』 唐突に、声が聞こえる。 目の前の黒い鬼が発したのだと言うことが、あきのにはなぜだか確信できた。しかしそれでも混乱したのは……それが耳ではなく別の場所から伝わったように思えたからだ。まるで、体の中から聞こえてきたような声。それはたぶん右手から……。 右手を見る。手首の内側。そこには緑の石が顔を覗かせていた。さきほど手の中に沈み込んだはずの石が、直径1センチほどの円となり、埋め込まれていた。 「これって……!?」 あきのはすっかり混乱していた。衝撃。ささった緑の石。その石を額にはめた黒い鬼。そして、自分の右手内側にある、円い緑の石。 しかし考える間もなく、新たな混乱の種がやってくる。 ずん、という衝撃音一つ。 振り向けば、そこには怪物がいた。 怪物――目の前のそれは、そう表現するしかなかった。 二本の手、二本の脚。それだけなら人と変わらないが、それぞれが異様に節くれ立ち盛り上がり、どこかいびつなバランスだった。それらが、筋肉で覆われた強靱な胴体に繋がっている。だが、なによりそれを人と違うと思わせるのがその白い肌だった。いや、その質感は肌と言うより樹脂のようで、柔軟さを見せながらそれ以上に堅さを感じさせる。 異様に大きな目は爛と紅く光り、いくつもの牙がはみ出ている 身長は3メートルを超えるだろう。 あきのは本能的な恐怖と混乱から、一歩も動けなかった。 怪物の目が、そんなあきのをじろりと見る。 心臓が止まりそうになる。それほどの圧迫感。そして、恐怖。 「……逃げろっ!」 ぎしぎしと身を軋ませながら、黒い鬼は立ち上がる。 今の声はちゃんと音として耳から聞こえた。 黒い鬼は目の前の白い怪物へと突進した。 黒い鉄の拳が、白い怪物の腹にたたき込まれる。 パンという派手な音が響く。しかしそれは表面で打撃が止められたことを意味する。黒い鬼の鋼の拳ですらこの怪物には軽い。 そして、怪物の白く大きな拳が振り上がる。 今度の音は重かった。 黒い鬼は一瞬消え、遠く離れた所から金属音が聞こえた。 あきのが音のした方を見ると、滑り台にめり込んだ黒い鬼の姿が見えた。その光景に呆気にとられていると、地響きが身体を揺らした。再び向き直ると、そこには白い怪物。 「ひっ……」 なにも考えず、逃げる。 一瞬の後、あきののいた場所のなにもかもが叩きつぶされた。地面も、散らばった板チョコも、バニラエッセンスも潰れる。余波でベンチまでもが吹き飛び、あきの自身も衝撃に飛ばされ地面に乱暴に投げ出された。 起きあがろうとするが、立てない。脚が震えて、立ち上がることができない。 恐怖と落下の衝撃が、あきのから立ち上がる力を奪っていた。 『くそうっ……!』 また右手の中から声が聞こえた。 『やはり、力が足りない……こいつを倒すには、力が足りないっ……! あんな小さな女の子も守れないのか、俺はっ!?』 悔しそうな声。それは、自分の力のなさと、あきのを守れないことに対する後悔の響きがあった。 チカラ……あきのは考える。 ……わたしは何もできないんでしょうか? このままなにもしなければ自分は死んでしまうかも知れない。でも、あの黒い鬼は「力が足りていれば」勝てるのかも知れない。 逃げろと言ってくれた。自分を守れないことを悔いてくれている。あの黒い鬼は、敵ではないと思う。 でも、どうやったらあの黒い鬼に力を与えることができるんだろう? 力。自分は食べれば力がつく。今だって疲れたから肉まんを食べた。ちょっと元気になった。これを、この元気をわけられないだろうか? ゆっくりと怪物が迫る中、あきのの思考は混乱しながらもどんどんと巡っていた。バカなことを考えているようにも思えたが、でも他にできることはない。 ……できることがあるのなら、それを全力でやるしかありませんっ……! あきのはどんどん思考を巡らす。 石。緑の石。声が伝わる。声が右手から伝わる。鬼の額にも同じ石。声が伝わる。だったら、力だって……! 右手にはもう食べかけの肉まんはない。怪物から逃げるときに落とした。だが、左手にはまだ紙袋がある。その中には二つも肉まんが入っている。素早く袋から取り出すと、口で強引に肉まんにはりつく紙を剥がす。 そして、一口。一口で口の中に収めた。 あきのの小さな口が、並の大きさとは言え肉まん一つを一口で収めるのは冗談のような光景だった。 涙目になりながらも、あきのは必死に口の中一杯の肉まんを咀嚼し、呑み込んだ。 瞬間、右手の石が、強く輝いた。 「おおおおおおおっ!」 その光に導かれるように、動くこともままならなかった黒い鬼が立ち上がる。身体に食い込む滑り台の残骸をはじき飛ばし、爆発的な勢いで怪物に迫る。 黒い拳が怪物にたたき込まれる。 その打撃音はさきほどとは明らかに違う。重く、そして強い。怪物はその衝撃に揺らぐ。 そのまま、黒い鬼は次々に拳を繰り出す。 先ほどは微動だにしなかった怪物が、黒い鬼の打撃に押される。 「離れろっ!」 黒い鬼の叱咤の声に、あきのはずりずりと必死に離れる。動くうちにどうにか足も言うことを聞くようになり、公園の端までよろけながらも逃げ込む。 振りかえると怪物に拳を浴びせる黒い鬼が見えた。だが……。 「でも、まだ足りません……」 あきのには分かった。 自分の食べた肉まんが、あの黒い鬼に力を与えた。そう思うのは自分の腹具合からだった。たった今肉まんを呑み込むように食べたというのに、少しも腹は膨れていない。食べたという感触がない。あの石が輝き、なにかがその輝きの中伝わる感触があった。その瞬間、おなかの中にあったはずの感触はなくなった。 力が伝わったという確信があった。 だが、それだけに自分の与えた力がどれほどのものだったのかもよく分かっていた。そして、それではあの怪物を倒すことができないと言うこともわかった。 今でこそ優勢に見えるが、怪物は黒い鬼の拳を確実に防御し始めていた。そしてあきのが与えた力はもうじき尽きる。そうすれば、黒い鬼は負けてしまうだろう。 紙袋から最後の肉まんを取り出す。 これを食べればまた黒い鬼に力を与えることができる。でも、その程度の力では決定打にならないことも分かっていた。 これでは、勝てない。 ……もっと考えなくてはいけません 手に埋まる緑の石を強く意識する。最初は声が伝わった。次に力も伝わった。そして今、意識すると……黒い鬼のことが伝わった。 情報が感覚として伝わってくる。言葉にならない、でも身体に理解できる形で伝わってくる。 黒い鬼は甲冑を着込んだ人間ではない。半分機械のようだった。 バネと歯車とピストンと、そうしたものが武骨に力強く組合わさってあの形になっている。あきのは機械に詳しくはない。だが、黒い鬼のことはなぜだか理解することができた。 あきのはその構造には無駄があると思った。 力を与えても、もっとうまく力を出すようにしなくてはならない。 新しい仕組みを作らなくてはならない。 そうだ。組み直さなくてはならない。もっと強く。もっともっと強く。黒い鬼の力をもっと出すための機構を、新たに造り出す。 「機構……構築……」 頭に浮かんだ言葉が、呟きとして口から漏れ出る。 「機構構築っ!」 叫ぶ。 黒い鬼が一瞬動きを止める。 振りかぶった右の拳。 その手が変わる。 内側から外側から、装甲が変形し歯車が入れ替わりシリンダーが増す。 そして、新たな秩序の元、組み変わる。腕は倍の太さになった。形もどこか生物的だった手が、工業機械のように無駄なく精緻なバランスでもって構成されている。 黒い鬼は、突然の変化に戸惑うように自分の腕を見る。 「使ってくださいっ!」 あきのの叫びに、黒い鬼は怪物へと向き直る。 そうする間にも、怪物は体勢をを整え攻撃するべく構えていた。迷っている暇はない。 それを、そのまま全力で怪物に叩きつける。 黒い鬼が、吠えた。 「拳撃機構・インパクトナックルッ!」 叫びに呼応するように。しかし、叫びをうち消さんばかりの激しさで、右腕が駆動する。 64の強力なバネと圧縮空気で爆発的に伸縮する8つのシリンダーが、右腕の肘から先を伸縮させ、強力な打撃を生み出す。 その打撃音は、むしろ爆発に近かった。 硬く砕けなかった怪物の身体が、砕けた。 拳は怪物の腹に半ばまで突き刺さる。怪物の腹からどす黒い血が漏れる。 「グオオオオオオオオオッ!」 初めて、怪物が吠えた。 痛みに震え、それでも力を振り絞り、黒い鬼の拳を引き抜く。そして、背を向け逃げさる。 「待てっ……!」 黒い鬼はそれを追おうとして、しかし膝をつく。全力を出しきったのだ。 あきのは逃げ去る怪物を見て息を吐く。 なにが何だか分からなかったが、危機は去ったのだ。 安心したら、膝の力が抜けた。そのまましりもちをついてしまう。 全身から力が抜けた。 ……え? 声を出そうとしても出ない。代わりに、 グウ おなかが鳴った。 赤面する。でも、今まで経験したことがないくらいおなかが空いていた。 どうしようかと思っていると、意識まで遠のいてきた。 ……あ、まずいです……。 視界まで暗くなってきた。この季節こんなところで眠ってしまったら風邪どころでは済まないかも知れない。でも身体に力は入らないしどんどん意識も遠のいていく。 どうにか意識を保とうとすると、ガラガラというやかましい金属音が聞こえた。まるで、金物を無造作に捨てるような音。そして、足音が近づいてくる。 ぼんやりとした視界の中、あきのは誰かが歩み寄ってくるのを見たような気がした。 ……ちょっとかっこいい人です。チョコレートをあげるならこんな人ですかね……。 ぼんやりとした視界と思考の中で、そんなことを思う。 そして、また腹が鳴る。 ……今の聞こえなかったですよね……? そんなことを気にかけたまま……あきのの意識は黒一色に塗り潰されていった。 |
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