は〜とふるらぶこめでぃ
ほのぼのこがらちゃん
|
その7 |
|
「さあっ、来たわよっ!!」 青い空っ! 白い砂浜っ!! そして磯の香りっ!! そうっ! ここはっ!!」 「せぇの………」 『海っ!!』 「って訳で海に来たのはいいんだけど………」 「今日はテンション高いな、こがら」 「まあ、海だしね」 「海だからなあ」 「それより、キョウコとカスミから連絡あったんだけど………。 今日、来られないんだってさ」 「ほう」 「急に用事が入ったんだって。せっかく晴れたのに残念だよね」 「まあ、そう言うこともあるだろう」 「で、岩田と山崎は? まだ来てないの?」 「ああ、あの二人も急に体調を崩したとかで来られないとのことだ」 「………マジ?」 「嘘をついてどうする」 「ええと、今回の海ツアーは男子三人女子三人の予定だったわよね?」 「そうだな」 「一泊する予定になってたわよね?」」 「その通りだ」 「………で、あんたと二人っきりなの?」 「そう言うことになるな」 「帰るっ」 「待て待て」 「帰るっ!! あんたと二人で一泊なんてことしたら どんな噂が立つか知れたもんじゃないわっ! 噂どころか現実にどんなことが起きることかっ!?」 「ほぉう………このまま帰る? 海は目の前なんだぞ? このままひと泳ぎもせずに帰るつもりか?」 「うっ………。 まあ日帰りに予定変更すれば問題ないかな………」 「でも明日にはお前が楽しみにしていたビーチバレー大会もあったよなあ?」 「ううっ」 「第一お前わざわざここまで来て、たった一日泳ぐだけで満足できるのか? 宿のキャンセル料だけ払って帰るなんて馬鹿馬鹿しいよなあ」 「うううっ」 「まあお前がどうしても帰るというのなら俺一人でも堪能してくるよ。 真っ黒に日焼けして海での話をいろいろ聞かせてやるから」 「あ、あたしがしっかりしていれば問題ないかな………。 噂だって事実がなければすぐになくなるだろうし………」 「ま、とりあえずひと泳ぎしてから決めようぜ。 まだ日は高いし、考える時間はあるしな」 「そうね………。 せっかく来たんだしね」 「そうそう」 「それにしても妙よねぇ。 わたしたち以外が一斉に来れなくなるなんて」 「そういうこともあるさ」 「それにみんな家が遠いわけでもないのにのに現地集合ってのも………。 考えてみると何か変ね」 「その方が時間が無駄にならないって話し合いで決まった事じゃないか」 「何か騙されてるような気が………」 「ほら、こがらっ! アレを見ろっっ!!」 「うゆ〜、海〜」 「さあ、行くか!!」 「うんっ!!」 ・ ・ ・ 「さ、行きましょ?」 「………」 「どうしたの? もう荷物、海の家に預けたんでしょ?」 「………」 「ねえ、何か言いなさいよ」 「………細いな」 「え?」 「普段あんまり意識してなかったけど、細い」 「なんのことよ」 「いや、思ったよりも華奢に見えるなって」 「と、突然なに?」 「普段の絶対打撃がこの細い身体から繰り出されるかと思うと不思議でな」 「そう………喧嘩売ってるのね………」 「いや、すまん。 精神的に言葉を選ぶ余裕がなくてな。ちょっと混乱している」 「さっきからなにが言いたいのよ」 「だからつまり………お前があんまりかわいいんで俺はどうしていいか分からないんだ」 「………」 「………」 「………ちょ、ちょっとなに言い出すのよっ!?」 「いや、だからお前は本当にかわいいな、と」 「う、嘘よっ! だって、別に普通の水着だよ。 白がベースのセパレートで、縁が赤くなってるくらいで飾りっ気ないし………」 「シンプルイズベストだよ。お前くらいかわいければ無理に着飾る必要はない」 「な、なによなによっ! 本当はもっとかわいい水着が欲しかったのにっ! 買いに行こうって言ったら忙しいってつき合ってくれなかったくせにっ! い、今になってそんな調子のいいこと言って………」 「え? あ、すまん。あの頃は根回しが忙しくて」 「根回し………?」 「な、なななんでもない。そ、それよりその青いリボンもかわいいな。 でも、今日は泳がないつもりか?」 「そんなことないわよ」 「え、だってリボンしてたら………」 「このリボンは耐水用の特製品だから、大丈夫よ」 「世の中そんなもの売られてるのか?」 「ううん。ないから作った」 「作った?」 「うん」 「な、なんでまた」 「リボン、したかったんだもん」 「そこまでこだわってるのか」 「え、だって……もういい。早く泳ぎに行きましょ」 「お、おう」 「思う存分泳ぐわよ。今日は安心して泳げそうだしね」 「?」 「だって………背の高い幼なじみが一緒でしょ?」 「えっ?」 「さ、さあ行くわよっ!」 「わ、待てっ! いきなり走るなっ!」 ・ ・ ・ 「ほらっ!」 「うわっぷ………反撃っ!」 「甘いっ!!」 「潜って逃れたか………それにしても、たかが水かけっこでここまでエキサイトすることになるとは………」 「何ボーッっとしてるの? ほらっ!」 「! 後ろから!?」 「そんなんじゃいつまでたってもあたしに水なんてかけられないわよっ!」 「しまった………忘れていた………」 「?」 「相手は体の九割をなだらかなラインで構成する究極の流線型っ!! でこぼこのほとんどない身体は水を抵抗として認めないっ!! その利を最大限に生かすこがらに対し、なんの備えもなく対抗しようとはっ!! 俺はなんて愚かなんだっ!!」 「え〜と、それはつまりあたしに胸がないって事かな〜?」 「うむ。その通りだ。すばらしいことだ」 「だああっ!!」 「うおあっ!! 大波っ!!」 「巨大なる水の圧力につぶれろっ!!」 「うわあああああ………」 ・ ・ ・ 「ここまで漕いでくれば十分よ」 「そうか……それにしても、貸しボートがちょうど空いててよかったよな」 「うゆ〜、浜の喧噪が遠いわねぇ……」 「なんか同じ海なのに、あそことは別の場所みたいだな」 「ここならのんびりできるわねえ………」 「さすがに泳ぎ疲れたなあ」 「そうねえ………」 「あの大波で周りにひしめいていた人間が軒並みいなくなって、存分に泳げたよな」 「貸し切り状態だったわねえ………」 「さすがにしばらくたつと元に戻ったけど、ここまで沖に来れば関係ないしな」 「静かよねえ………」 「苦労して漕いできた甲斐はあったな。 ………とりあえず、サンオイル塗るか?」 「寄るな塗るな」 「ううっ」 「全く………さぁてと」 「ん? なんだ、それ」 「へへへ、近くにコンビニあったから買っておいたんだ」 「それは………牛乳?」 「悪い?」 「い、いや……いい。 牛乳はいい………」 「なによ、前は飲むなって言ってたくせに。変なの」 「………」 「………」 「………」 「ぶっ!」 「ど、どうしたいきなり吹き出したりしてっ?」 「あ、あんたひょっとして思いきり恥ずかしいこと思い出してない?」 「べ、べべべ別にファーストキスの思い出を反芻なんかしてないぞっ!」 「嫌と言うほど思い出してるじゃないっ!!」 「そんなこと言われても大切な思い出だし………」 「か、勘違いしないでよっ! あたしそんなつもりで牛乳飲んでるわけじゃないからねっ! これは純粋に美容と健康と豊胸と身長を伸ばすためのっ……」 「わかったからそんなにブンブカ手を振るなっ! あ、危ない!」 「ああもうあんたのせいでうかうか牛乳も飲めなくなるなんてっ!! ………!?」 「ん? ………大波っ!?」 「きゃっ」 「うわっ」 ・ ・ ・ 「揺れたな」 「揺れたわね」 「………」 「で、何であんたはあたしにのしかかってるの?」 「お前が暴れるから止めようとして立ち上がったところにあの揺れが来て……」 「それはいいとして………。 なんかとてつもないことが起きたような気がするんだけどあたしの気のせいかしら?」 「俺もそんな気がするけどよくわからない」 「………」 「………」 「………」 「………なんか牛乳の味がする………」 「!!」 「? ………!!」 「ま、まままさかまさかまさかっ!!」 「えと……ええっ? えええええええっ!! ってまた波がっ!!」 ・ ・ ・ 「………」 「………」 「………」 「………」 「………もっと牛乳の味がする………」 「!!!」 「この唇に残る甘い感触は間違いない………!」 「ちょっ、えっ、嘘っ!!」 「幸せだ……幸せな気分だ………。 今日を牛乳記念日と制定したいくらいだ………」 「そっ、そんなっ! あたしはこんなの認めないわよっ! こんな事故みたいなの………こんなのっ………!」 「じゃあちゃんとしよう」 「えっ?」 「………しよう」 「えっ! ちょっ、マジ? こ、心の準備が………」 「こがら………」 「やっ………あのっ………駄目ぇっ!!」 「!!」 「!?」 「何か今ものすごい音が……」 「したわね………きゃっ!?」 「どうした?」 「背中が冷たい………」 「し、浸水してるっ!」 「え? どうして?」 「お前今暴れて肘をたたきつけていたようだが」 「あ、あれで?」 「多分」 「ど、どうしよう。早く水を掻き出さないとっ!」 「だめだろう………致命的なくらい大きな穴だ」 「な、なに落ち着いてるのよっ! 沈むのよっ! こんな浜辺から離れている所じゃ、泳いで戻るのだって簡単じゃないわよっ!!」 「大丈夫だ。 絶対、俺が守る」 「もう、誰のせいだと思ってるんだよ」 「さあっ、つかまれこがらっ! 浜辺まで全力で泳ぐっ!!」 「え、大丈夫なの?」 「当然だっ! 行くぞっ!!」 「うわ、速いっ! ………やっぱり……水の中じゃ守られちゃうのかな………」 「ん? どうした?」 「な、なんでもない」 「よし、行くぞおぉぉぉぉ!!」 「別にそんなに頑張らなくたってあたしが自分で泳いだっていいのに………。 相変わらず、バカなんだから………」 了 |