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は〜とふるらぶこめでぃ
ほのぼのこがらちゃん

その0
〜決意とリボンと〜




「うああああああーーーっ!!」
「がはあっ!」
「ぐふっ!」
「おととい来なさいっ!!」
「くそぉっ、覚えてろよっ!」
「とっとと立ち去れっ! 負け犬っ!!」

「こがらちゃ〜ん」
「ん?」
「いくら何でも5メートルも吹っ飛ぶくらい殴るのはやりすぎじゃあ………」
「あたしのことを『ブス』だの『人型兵器』だの『おかっぱの悪魔』なんて言ったのよっ!?
 それぐらい当たり前よっ!」
「当たり前って………普通の人は死んじゃうよ」
「あいつらも結構頑丈よねぇ」
「そういう問題かなあ………」
「だいたいあたしはブスなんかじゃないわっ!
 髪が短くしてるから女の子らしくないなんて、あの、ええと………そうっ! ”へんけん”よっ!」
「こがらちゃんはブスなんかじゃないよね」
「そうそう」
「だってこがらちゃんとってもかっこいいもん」
「………それも何か違うような気がするわねぇ。
 ま、いいわ。つまんない用事も済んだことだし、商店街にでも行きましょっ」



「だいたいあいつらも来年は中学生だって言うのに、くだらないことで絡んできて………」
「なんか小学生のうちに町内最強になるんだって言ってたよ」
「そんなことにか弱い乙女のあたしを巻き込んで欲しくないわね」
「だってこがらちゃんが町内最強………」
「あたしだって中学生になったら制服着るのよっ!
 そしたらスカートよっ! かわいいのよっ!」
「こがらちゃんきっと似合うよ」
「あんたは学生服似合わなそうね」
「うっ」
「男のくせにあたしより背が低いし、弱くて頼りないし。
 すぐいじめられて、あたしに頼ってばっかり」
「ひどいよ〜」
「あたしだって女の子だから、一度くらいかっこいい男の子に守られたいわね。
 ……あんたには期待していないけどっ」
「そんな〜。だいたいこがらちゃんのどこを守るっていうんだよ〜」
「あんたねぇ………。
 ま、そんなこと言ってるうちは無理ね」
「む〜」
「あ!」
「?」
「きれい………」
「この洋服屋さん、ウエディングドレスつくったんだね」
「うゆ〜………すごい………」
「そうだねえ」
「大きくなったら、こんな白くてふわふわな服着たいなあ………」 
「………」
「でも……今はまだ似合わないな………」
「えっ?」
「な、なんでもないっ!
 さ、行くわよっ!」





「さあて、泳ぐわよっ!!」
「こがらちゃん待ってよ〜」
「遅いぃっ! 先にプール入っちゃうわよっ!」
「そんな〜。それに、準備体操まだでしょう?」
「ザッパーンッ!!」
「うわあっ!!」
「へへへ〜」
「ゴホッ………ひどいよ、いきなり突き落とすなんてっ!」
「一緒に飛び込んだんだから、突き落としたんじゃないわよ。
 だから悪くないの」
「うう〜。
 ここ深くて足がつかなくからすごくビックリしたよ」
「あたしはぎりぎり足がつくわよ。
 あんたチビねぇ」
「泳げるからいいもんっ!」
「泳げる、ねえ………。
 それなら競争しましょっ! よーいスタート!!」
「あ、ずるいっ!」
「? きゃっ! 痛っ!」
「!?」
「あ、足が……ゴホッ……つった……ゴボッ」
「こ、こがらちゃん」
「ブクッ……ゴフッ……ウッ」
「こがらちゃんっ!」
「た、助っ……」
「こ、こがらちゃん、そんなにしがみついたらっ………ゴボボッ……」
「ゴ、ゴボっ……ゴボボッ」
「うっ………わっ………ゴボボボッ」



「どうしよう…………あんなに強いこがらちゃんが、何も出来ずにおぼれちゃう………。
 僕も、おぼれちゃう……。
 どうしよう………どうしよう………」

『あたしだって女の子だから、一度くらいかっこいい男の子に守られたいわね』

「僕じゃ、こがらちゃんを守れないのかな………。
 こがらちゃんに守られてばっかりで、僕は何にも出来ないのかな………。
 このまま、おぼれちゃうのかな………。
 こがらちゃん、おぼれちゃうのかな………。
 やだ………。
 やだよう………。
 そんなの……ヤダっっ!!!」



「……て………けてっ」
「………?」
「ねぇ、起きてよぉっ! 目を開けてぇっ!!」
「こがら……ちゃん………?」
「! 良かったっ!」
「どうしたの……僕……」
「わ、わたしたちおぼれそうになって………」

「俺に、助けられたんだよ」
「おじさん、だれ?」
「おじさんじゃない。プール監視員の”おにいさん”だ」
「おにいさん……?」
「その女の子がおぼれそうになったんだ。君も巻き込まれておぼれそうになった。
 急いで駆けつけたら、君が先に沈んでしまった。
 いや、沈んだんじゃない。君は……」
「ぼくは………?」
「君は、その女の子を持ち上げて、プールの底をプールサイドまで歩いたんだ。
 だから女の子はほとんど水を飲まなかった」
「そう、なの………」
「君は水をたくさん飲んでしまった。危ないところだったんだよ。
 第一普通おぼれて水を飲んだらあんなことは出来ないはずなんだが………」
「ぼくが………」

「もうっ………。
 あんたは心配ばっかりかけるんだからっ………!」
「こがらちゃん………。
 あれ………泣いてるの………?」
「そういうこと言うんじゃないっ!!
 本当に心配したんだからっ!!」
「泣いてる………。
 こがらちゃんが、泣いてる………。
 こんなの、違う………。
 こんなのじゃ守ったことにならないよ………」
「何言ってるのよ………」
「僕がもっと背が高かったらちゃんと助けてあげられたのに………。
 僕がもっと泳ぎがうまければちゃんと助けてあげられたのに………。
 僕が、僕がもっと強かったらっ………!」
「………」



「じゃ、そろそろ行くよ」
「………本当に引っ越しちゃうの?」
「うん。お父さんの仕事で、仕方ないんだ」
「そう………ま、あんたみたいな弱虫いなくなってせいせいするわ」
「こがらちゃん………」
「言っとくけど、これはうれし泣きだからねっ!!
 勘違いしないでよねっ! グスッ」
「こがらちゃん、僕は泣かないよ」
「?」
「ぼくは、強くなるんだ。こがらちゃんを守れるくらい、強く………」
「な、何言ってるのよ………」
「だから、今はこれだけ」
「? これ、リボン?」
「ぼくがこがらちゃんを守れるくらい強くなったら、帰ってくる。
 そうしたら、こがらちゃんは白くてふわふわの服を安心して着れる。
 今はまだ無理だから、これだけ」
「………」
「じゃ、行ってくるね」
「か、必ず帰ってきなさいよっ!!
 待ってるからっ!! 絶対帰ってきなさいよっ!!」
「………うんっ!」





「あれから、6年か。
 頑張って、あの親父すらも倒してようやく一人暮らしの許可をもらえた。
 この街に戻って来ることができた………。
 でも、俺は、あの約束を果たせているんだろうか?
 俺は、強くなれただろうか? 」
「なにひとりごと言ってるんだ?」
「ああ、すまん」
「引っ越しも大体片づいたみたいだが」
「ああ、ありがとな。お前みたいなやつが友達だと助かるよ」
「引っ越しのバイトのノウハウが役立ったな。が、疲れたぞ」
「はは、ゆっくりしててくれ。何か食い物買ってくる」
「おう」


「さてと………潰れてなければ、あっちに弁当屋があったはずだな」
「え〜と、ここのアパートのはずだけど………」
「あれ………あの娘?」
「ん〜と、あ!」
「もしかして………こがらちゃん?」
「その呼び方………」
「お、俺だよっ!」
「えっ………? 嘘っ! あんたなのっ!?」
「やっぱりこがらちゃんか………。
 なんか、小さくなったな」
「あんたがでかくなったのよっ!!
 くそぉ、何か悔しいわっ」
「そうか、ここ6年で急に伸びたからな………」
「それより、来るなら来るでちゃんと前もって挨拶しなさいよね。
 今日来た手紙に引っ越しが今日です、なんて書いてあったら驚くじゃないっ!」
「それで早速来てくれたのか。嬉しいな」
「そ、そんなんじゃなくてっ………ちゃんと挨拶に来ないから文句言いに来たのよっ!!」
「相変わらずだなあ………あ、髪伸ばしたんだ」
「リボン」
「?」
「あんたが別れ際にあんなものくれたりするから困ったのよ。
 あの頃じゃどこにつけても似合わなくってさ」
「………」
「自分がリボンも似合わない、可愛くない女の子かもって、ちょっと悩んだのよ」
「そうだったのか………すまない」
「ちょ、そんなまじめに受け取らないでよ。
 冗談よ。冗談。
 それにほら、今は似合うでしょっ?」
「うん………あれ? その髪止めてるの、ひょっとして………」
「今頃気づいたの? あの時のリボン。
 あたしの髪もリボンで結えるぐらい伸びたんだから」
「うん………似合うよ………本当に、似合う」
「へへへっ」
「ふわふわの白い服も、もう着れるね」
「当然よ」
「俺は、約束したほど強くなったかはまだ分からない」
「いいのよ。帰ってきてくれれば。それに、あたしはあの頃よりずっと強いわよ」
「俺も強くなってるんだが………」
「ね、それよりさ」
「ん?」
「彼女とか………出来た?」
「唐突だな」
「いいじゃない。で、どうなの?」
「いや、いない」
「そう」
「? なんで嬉しそうなんだ」
「そんなことないわよ」
「?」

「ねぇねぇ、ちょっといい?」
「…なんだ?」
「細めの娘と太めの娘、どっちが好み?」



そして、始まる………

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